海外ゲーム『ゴースト・オブ・ツシマ』はなぜ、“史実と違っても”受け入れられたのか?
歴史というテーマは、グローバルゲーム市場において大きな存在感を放っている。そして歴史をテーマとしたゲームに付いて回るのが「史実との整合性」だ。 【画像】あまりにも美しい、『ゴースト・オブ・ツシマ』の実際のプレイシーン 特に、日本の歴史を題材としたゲームでは、その描写の正確性について日本国内を中心に白熱した論争が巻き起こっている。 コンテンツに歴史の要素を取り入れる時、その国の人や文化に配慮すべきだという意見は理解できる。しかしそもそも娯楽であるゲームに、史実を正確に描写することについてどこまで求めるべきだろうか? この題材について、近年の代表的な成功例である『Ghost of Tsushima』(ゴースト・オブ・ツシマ)を中心に考察してみたい。
史実と創作の境界線
ゴースト・オブ・ツシマは「元寇」を取り扱った珍しいゲームである。13世紀末の文永の役を題材に、元王朝と高麗が対馬へ侵攻した時代を舞台としたオープンワールドアクションRPGだ。プレーヤーは対馬の侍「境井仁」となり、故郷を守るため元軍に挑むという構成である。 侍の道に反するような、非道な戦い方に手を染めても対馬の民を守ろうとする境井仁の葛藤が巧みに描かれた作品だが、本媒体でゲーム本編の魅力に触れるのはここまでにしておこう。 本ゲームは時代考証に基づく精緻な武具や建造物、水墨画を思わせる美しい自然描写に加え、時代劇のような演出が国内外で高く評価されている。 元寇という日本では誰もが知る史実を扱い、高い評価を得た作品であるが、史実に忠実であったかというとそうではない。 例えば、ストーリーの根幹となる戦の描写は大幅に脚色されている。さらに、ゲームの舞台となる対馬の地形や自然環境についても、ゲームプレーの快適性を優先し、森林を減らして広大な草原を配置するなど、当時の対馬とは異なる描写が随所に見られる。 ただ、これらの脚色について日本国内で「史実と違う!」と大きな批判対象にはなっていない。日本をテーマにした海外製のゲームが史実と違うとして、たびたび”炎上”するにもかかわらずである。