「1000万円があっという間に消えた」川田利明が「もう思い出したくもない」と語るラーメン屋開業資金の現実
◆開業資金 厨房の中だけではない。お客さんを相手にする商売だから、少しでも快適に食事をしてもらえるような環境は整えていかなくてはダメだ。 いちばん負担が大きいのはエアコンと券売機だ。両方とも100万円前後はする。 狭い店であれば、そんなにお金もかからないのかもしれないけれど、ウチはラーメン屋としてはかなり広い部類に入るから、大きなエアコンを天井に設置しなくてはいけない。 たしか100万円近くしたのかな? だからテーブルや椅子は自分で直したけど、もう客席エリアだけで何百万円も消えてしまう。 まさに財布の中の1万円札に羽が生えて、一斉にバサバサと飛び立っていくような感じだ。 居抜きであろうがなかろうが、ラーメン屋を開業しようとしたら、少なくとも1000万円は開業資金を用意しておかないと、たぶんすぐに足りなくなるだろう。 これも最低限、頭に入れておいたほうがいい。
◆1000万円を回収するには そして、俺には経営の知識もノウハウもなかったから、あっちに支払い、こっちに支払い、とやっていくうちに、気がついたら1000万円はすぐ消えてしまっていた。 資金だけではなく、頭もショートしてしまった。 これだけお金をかけても、このお店の主力商品となるのは一杯数百円のラーメン。 原価率を無視して考えても、1000万円を回収するには、毎日、どれだけラーメンを売ればいいのか? いや、「回収するなんて、絶対に無理じゃないか」と、絶望に似た感情を抱いてしまったことを覚えている。 最初はなんにもわからなかったから、業者の人にいろいろとお願いしたんだけど、向こうも商売だから「これは絶対に必要です」「念のため、あれも買っておいたほうがいいですよ」とどんどん勧めてくる。 プロが言うんだから間違いないな、と言われるがままに買ってしまったけれど、あとになって思えば「あんなものは買う必要なんてなかったじゃないか!」と思うようなものもたくさんあったし、もっと安く買えたじゃないか、と憤(いきどお)ることも多かった。 初心者だから知らなくて当然、というのは甘すぎる。開業前のマイナスを少しでも減らすためにも、そのあたりのリサーチは徹底的にやるべきだと思う。 ここまで読んで、「俺は大丈夫だ」と思っている人がいちばん危険だ、ということも付け加えておきたい。 ※本稿は、『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社文庫)の一部を再編集したものです。
川田利明
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