Netflix年間最大ヒット!「セキュリティ・チェック」 人気の理由は「ダイ・ハード」的懐かしさにアリ?
Netflixで12月13日に配信開始されたオリジナル映画「セキュリティ・チェック」が、好調だ。初登場にして93カ国でトップ10入りし、10日間で約9700万回再生という年間1位の数字をたたき出した。このままの勢いだと、Netflix歴代トップ10のヒットになるフィーバーぶりだ。日本でも連日映画視聴ランキング上位に君臨し続ける本作、人気の理由は何なのか? 改めて考えてみたい。 【写真】終盤までほぼいいところなしの残念さが共感を引き出すタロン・エガートンの演技 「セキュリティ・チェック」
舞台はクリスマスでごった返す空港
まず、作品の概要をおさらい。もはや説明不要の人気作「エスター」や「フライト・ゲーム」ほかリーアム・ニーソンのアクション作品を手掛け、近作では「ジャングル・クルーズ」などが挙げられるジャウム・コレット・セラが監督。主演を「キングスマン」シリーズのタロン・エガートンが務める。舞台は、クリスマスでごった返す空港。同じ空港で働く恋人の妊娠が分かった税関職員イーサン(エガートン)は、将来のためにもキャリアアップを決意し、荷物検査のポジションを願い出る。だが運悪く謎の男とその仲間に脅迫され、「ある荷物を通過させろ。逆らえば恋人を殺す」と言われてしまい……。 このあらすじから見てとれる通り、「セキュリティ・チェック」は過去の人気作にも通じる王道要素てんこ盛り×Netflixという「自宅で簡単に見られる」視聴環境が掛け合わさったハイブリッドな一本。もちろん新鮮味はあれど、手練れのキャスト・スタッフによる手堅い一本という印象の方が強い作品ではないか。ただ面白いだけでは当たらない昨今の映画興行の難しさに対する、「ユーザビリティー特化」という一つの解答といえるかもしれない。
映画好きを刺激する〝こういうのでいいんだよ〟感
本作はいわゆる〝 巻き込まれ型サスペンス 〟であり、クリスマスや空港という要素も相まって「ダイ・ハード」シリーズを想起させる。さらに主人公の名前が「イーサン」と、「ミッション:インポッシブル」好きなら反応してしまう要素も盛り込んでいる(余談だが「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」の序盤の舞台も空港だった)。特殊技能を持たない男が姿の見えないテロリストに翻弄(ほんろう)される展開やライブ感、途中から姿を現して直接対決に移行していく流れは、ジョニー・デップ主演の「ニック・オブ・タイム」にも通じる。 これらはあくまで一例で、冒頭からの伏線の張り方や「別の事件を追う刑事がやがて合流する」展開、「かつて警官を目指していたが諦めた男」という主人公のバックボーンに至るまで、映画好きをいちいち刺激してくる点が特徴だ。事件に巻き込まれた職員や市民があっさりと死んでいくある種のドライさ、途中から犯人グループがなりふり構わず暴れ出し、どんどん大ごとになっていくやや大味な物語の転がし方、10分に1回くらいきちんとアクションシーンを入れてくれる親切な設計、お約束ともいえる主人公の爆弾処理シーン、危機を脱した際の主人公×ヒロインのいちゃつき等々、ウエット&シリアスな傾向にある昨今のハリウッド大作のトレンドとは異なり、どこか懐かしい。いわば「セキュリティ・チェック」は〝 こういうのでいいんだよ〟感をきちんと踏襲した快作といえる。