Netflix年間最大ヒット!「セキュリティ・チェック」 人気の理由は「ダイ・ハード」的懐かしさにアリ?
今風映像センスと説得力のある演技
もちろん、懐かしさは古臭さにもつながりかねないため、バランス感覚は必要不可欠。その点、「おしゃれすぎるサメ映画」として界隈(かいわい)で話題を呼んだ「ロスト・バケーション」のセラ監督は抜かりない。彼の得意技である「スマホ上でのやり取りがAR(拡張現実)的に画面に表示される」〝 映え〟な演出はもとより、ダイナミックな空撮やここぞという場面での長回し等々、随所に今風な映像センスを感じさせる。今回の〝 脅威〟となるのはロシア製の神経ガス爆弾だが、操作アプリを含めたガジェットのデザインもレトロとスタイリッシュの中間点に着地させている(個人的には解体シーンに名作「ザ・ロック」を思い出した)。 特に前半は犯人が姿を現さないため、イーサン役には表情で引っ張らねばならない役割が課されるが、きっちりとこなしたエガートンの芝居も利いている。本作の特徴のひとつに、最後の最後まで主人公が覚醒しない点が挙げられるが、「着眼点はいいのにテンパり気味で常に犯人のほうが上手」「直接対決シーンでもほぼ一方的にボコられる」「犯人に負け犬呼ばわりされてしまう」等々、終盤までほぼいいところなしの小市民感にきちんと説得力を持たせており、その残念さが視聴者の共感の呼び水として機能している(彼が犯人に仕掛けるわなも税関職員ならではのアイデアだ)。配分を間違えれば「カッコ悪い」「魅力的でない」と思われてしまうようなところをしっかりと回避し、最後の最後にヒーローになる逆転劇で魅了する後味の良い娯楽大作にできたのには、エガートンの貢献度も非常に大きい。 奇をてらった構成ではなく「待ってました」な要素を増やすことで、「わかりやすさ」が強化され、視聴者に「気持ちよさ」を呼び起こす「セキュリティ・チェック」。年末年始でどこまで数字を伸ばせるのか、そして今後のNetflixオリジナル映画にどのような影響を及ぼすのかも注目だ。
映画ライター SYO