【中学受験】寺修行からの、塾&家庭教師 ダブル投資!? 入試まであと半年、母が下した最後の決断は【シングルマザーの中学受験 奮闘記|全寮制中高一貫校までの道のり】
しっかりと自分を見つめる時間
「今からお母さんと君を連れて行きたいところがあるので、出かける準備をしてください」と、河田さんは静かな声で言いました。 息子はどこへ連れて行かれるのかわからずビクビクしながら、私と一緒に河田さんの車の後部座席に乗り込みました。約30分ほど走ると、車は大きなお寺の駐車場へ着きました。そこは、私も仕事でお世話になったことのある禅寺でした。 その禅寺の和尚は全国各地で講演活動を行い、有名企業の経営者も人生相談に訪れるほどの人物。河田さんが寺の玄関で「おはようございます」と挨拶すると、堂々たる体格の和尚が奥から出てきて、お腹まで染み渡るような声で「ああ、いらっしゃい。待ってたよ。奥へ入りなさい」と言い、広い本堂へ案内してくれました。 河田さんが和尚の前で深々と頭を下げ、これまでの経緯を説明すると、和尚は大きく分厚い手を息子の頭を鷲掴みにするかのように置き、ゆっくりと撫でながら、顔を覗き込んで語りかけました。 「そうか。君がやったことは、罪深いことなんだよ。そういうことを繰り返していると、やがては犯罪者になり、後悔することになるよ。仏教の世界では地獄に落ちることになる。君はそんな人間になりたいのか?」 息子は小さく首を振りました。 和尚は続けて、「2、3日寺に泊まって、自分を見つめてみてはどうかな?」と提案してくれました。 息子は慌てて「大丈夫です。心を入れ替えます。お母さんとおじさんをもう裏切ったりしません」と言いましたが、和尚はにっこりと笑ってこう答えました。 「人というのは、そんなに簡単には変われるものじゃない。変われるなら誰も苦労はしないんだよ。みんな変われないから、苦しんでいるんだ」 私のほうに顔を向けて、優しいまなざしで、「お母さんはどう思いますか?」と和尚。 私は間髪を入れず、「ぜひ、お願いいたします。私も一緒にお世話になりたいです」と言いました。 息子は(えっ、僕は嫌だ)と目で訴えてきましたが、息子の不安そうな気持ちに構うことなく、その日からお寺のお世話になることにしました。 息子を寺に残し、私は一旦家に戻って、学校へ3日間の欠席を連絡。最低限の荷物を持って寺へ戻り、寺での生活がスタートしました。 早朝5時に起床し、境内を掃除してから座禅を組む生活。食事は精進料理で、派手さは一切ありません。息子は掃除を途中で辞めてしまいお坊さんに注意されたり、坐禅のときにはすぐに集中力が切れてしまい体を揺らすので、お坊さんから警策(座禅中に使われる細長い棒)で背中を叩かれたりしていました。 そんな様子を見るたび、私はまるで自分が叱られたり、警策で叩かれているような気持ちになり、かわいそうにも感じました。しかし、これが彼のためになると信じて見守りました。