政労使会議、最低賃金1500円の議論開始 経済界からは懸念の声
政府は26日、政府と経済界、労働界の代表が協議する政労使の会議を首相官邸で開き、石破茂首相は来年の春闘に向け「33年ぶりの高水準の賃上げとなった今年の勢いで、大幅な賃上げのご協力をお願いする」と要請した。2020年代に最低賃金の全国平均時給を1500円に引き上げる政権の方針については、政府が来春までに対応策をまとめるが、現行水準から4割超の引き上げになるため、出席者から慎重な意見も出された。 【図解】年代ごとの非正規労働者の割合 政労使会議の開催は石破政権になって初めて。経済界から経団連の十倉雅和会長、日本商工会議所の小林健会頭、労働界からは連合の芳野友子会長らが出席した。 最低賃金を巡っては、岸田前政権が「30年代半ばまでに1500円」を目標に掲げた。10月に発足した石破政権は達成時期の前倒しを表明。首相はこの日の会議でも「20年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」と改めて強調した。 こうした政府方針について経済界は警戒感が強い。24年度の最低賃金(全国平均)は、前年度から5・1%増の1055円。残り5年で達成するには毎年7・3%の引き上げが必要な計算になるためだ。 十倉会長は会議後に記者団に「どうやってそれが実現できるか労使の意見も聞きながら、進めてくださいとお願いした」と慎重な議論を求めた。小林会頭も「引き上げのスピードと額に大いに懸念を持っている。地方の中小企業、地方経済の減退につながりかねない」と指摘した。芳野会長も「(政府には)根拠と丁寧な説明が必要ではないかと申し上げた」と語った。 政府がこの後開いた経済財政諮問会議でも賃金向上に関する特別セッションを開催した。首相は、労働問題に詳しい山田久・法政大経営大学院教授らの有識者を交えて、賃上げに向けた課題を議論した。【古川宗、園部仁史、安部志帆子】