21万人の「本音」をブランド成長の「インサイト」に。ファンコミュニティ読み解く アテニア のトレードオン思考
ユーザーの純度を上げることが重要
DD:コミュニティづくりの成功例だと思いますが、要因はなんでしょうか。 春田:ひとつは、全社がこのコミュニティをどう位置付けるか、意志が統一できていることです。マーケティングの手法は多様になってきたので、世の中のトレンドが変わったりマネジメント層が変わったりすると見直しが入ったりします。 費用対効果や投資回収の観点、成果の可視化などを問われることもあります。もちろんそれは大事なことでもありますが、このコミュニティサイトは「お客さまが本音で意見をいえる場所」だということをブレずに守ってきたことが成功の要因だと思います。 もうひとつはユーザーの純度を上げたことです。拡散力を考えると各SNSが効果的だと思います。「ポジティブの帰着」は純度が高いからこそ本音も拾えると思います。 つまり、ファンでいてくださるということです。ターゲットであるユーザーが安心して発言できる場づくり、絶妙な距離感が極めて大事だと考えています。 DD:「絶妙な距離感」はどのようにつくれるのでしょうか。 春田:なかなか難しいのですが、たとえばセールスのような感覚を持ち込んでしまうと、とたんに場の空気が変わってしまいます。商品に対する純粋な意見が聞きたいという問いかけにはお客さまも真摯に答えてくれますが、下心がある、売るための問いかけには返答してくれません。 オンライン空間でありながらも、場の空気を肌で感じながら運営する、その絶妙さはマーケターの感覚ともいえます。 DD:21万人という数字は、マーケティング的な視点からするとどうですか。 春田:コミュニティの会員数を増やして売り上げを拡大しようとは考えていないため、21万人の生活者との深いつながりがマーケティングの起点となるといった意味では十分な数字だと思います。そもそも、ファンコミュニティはそのなかで物事をスケールさせようとするのは無理があります。 それよりも、コミュニティのなかにあふれた本音を商品やサービスにどう活かしていくかが重要です。我々が向き合うお客さまはファンコミュニティのユーザーの何倍もいますが、そのスケールポイントをコミュニティのなかに置かないのは大事なポイントです。