「サブカルとJ-POP」1990年代編、渋谷系、ダンス、エヴァンゲリオン
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 2024年6月の特集は、「サブカルとJ-POP」。802でもやらない夏休み自由研究というテーマのもと、2カ月間に渡ってサブカルと音楽の話を渡り掘り下げていく。 こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのは中島みゆきさんの「時代」。1975年発売の2枚目のシングル。2018年に出た『中島みゆき ライブリクエスト -歌旅・縁会・一会-』からお聴きいただいております。今月の前テーマ。そして来月もこの曲で始めようと思います。 時代 / 中島みゆき 今週はパート5、90年代編ですね。1989年に昭和が終わって、平成になりました。平成最初の10年。アナログからCDへと音楽の聴かれ方も変わった。そして、メイン・カルチャーの方では空前のミリオン・セラーが連発されて、業界がお祭り騒ぎだった。そんな10年間ですね。新しい流れが続々誕生しました。まずは90年代のサブカル・シーンの幕開けを飾った人たちの曲をお聴きいただきます。今週も曲紹介はなしです。 今夜はブギー・バック/ スチャダラパー 1994年3月に発売になりました。スチャダラパーと小沢健二さんの「今夜はブギー・バック」。スムースラップバージョンというサブタイトルがついております。ラップと渋谷系の合体ということになりますね。作詞作曲が小沢健二さんと光嶋誠さん、松本真介さん、松本洋介さん。この3人はスチャダラパーの3人ですね。MC Boseさん、ANIさん、そしてDJ SHINCOさん。小沢健二さんはフリッパーズ・ギターの一員で、スチャダラパーはヒップホップのパイオニアでありました。それぞれが自分のレコード会社でそれぞれのバージョンを発売したんですね。小沢健二さんのバージョンはナイスヴォーカルバージョンとして東芝EMIから発売になって、このスチャダラパーのスムースラップバージョンはキューンソニー、ソニーから発売になりました。先週の清志郎さんと坂本龍一さんもそういうコラボレーションの形でしたが、ヒップホップ関係の中でのコラボレーションという意味では、先駆けになった曲じゃないでしょうか。 恋とマシンガン / Flipper’s Guitar 1990年5月発売、フリッパーズ・ギターの2枚目のシングル「恋とマシンガン」。小山田圭吾さんと小沢健二さんですね。デビューは1989年だったんですね。1stアルバム『three cheers for our side ~海へ行くつもりじゃなかった』というのが、この曲の前に出ているのですが全曲英語だった。全曲日本語で歌ったのが1990年の2枚目のアルバム『CAMERA TALK』。その中にこの「恋とマシンガン」が入っておりました。ネオアコという言葉が広がったのが、この曲でしょうね。アコースティック・ギターで16ビート。ハーモニーがあって、とてもメロディアスで軽快で明るい、クールでスタイリッシュ。おしゃれでしたね。英語が全然不自然じゃなかったというのも、彼らのデビュー・アルバムの感想ではあったんですけども、やっぱり日本語の方が10代の人たちにヒットしましたね。中高生の女の子、パーフリちゃんというふうにみんな呼んでましたからね。フリッパーズ・ギターをプロデュースしたのが、加藤和彦さんのときにゲストに登場していただいた牧村憲一さんだった。あの人はサブカルにずっといましたね。 渋谷系というのは80年代の終わりから流れになっておりまして、クラブのDJと渋谷の中古盤屋に集まってくる音楽オタクの流れが合体した。そこに六本木のウェーブも加わって新しい洋楽と古い洋楽を一緒にして、1つの流れになっていった。ピチカート・ファイヴ、それから田島貴男さんのいたORIGINAL LOVE。そういう人たちがいましたが、90年代の幕開けということでいうと、フリッパーズ・ギターの印象も大きかったなと思ってこの曲にしました。80年代後半のバンドブームにはない、とても育ちのいいスマートな感じがしました。小山田さん、1969年生まれ。小沢健二さん、1968年生まれ。新世代登場でしたね。フリッパーズ・ギターは1991年に解散して小山田さんはCorneliusになって、小沢健二さんはソロになるんですね。