男性もHPVワクチンでのどや肛門のがん予防を 自己負担5~6万円の任意接種に助成も 国際男性デー2024
子宮頸(けい)がんの原因で知られるヒトパピローマウイルス(HPV)は、男性でも肛門がんや、のどの中咽頭がんを引き起こすことがある。日本ではウイルス感染を防ぐHPVワクチンの定期接種は女性だけが対象。ところが最近、一部の自治体が男性にも接種費用の助成を始めた。11月19日は男性の心身の健康に目を向ける「国際男性デー」。健康を守るためにできることを考えてみよう。 「HPVは性別に関係なく8割近くの人が感染するといわれる身近なウイルス。男性がワクチン接種する目的は、何より自分自身の健康を守ることにあります」。そう話すのは、産婦人科医で「HPVについての情報を広く発信する会」の代表理事、稲葉可奈子さんだ。 ■自分自身と将来のパートナーを守る 稲葉さんによると、HPVは男女を問わず、肛門がんや中咽頭がん、性感染症の尖圭(せんけい)コンジローマなどの原因ともなる。特に中咽頭がんは、女性より男性に多い。 HPVは性交渉で男女が互いにうつし合って広がる。そのため海外では欧米を中心に40カ国以上で、女性だけでなく男性にも公費接種が行われているという。 「男性への公費接種が定着しているオーストラリアや英国では、集団免疫の効果が表れ、全体的なHPV感染率が下がってきている」と稲葉さん。男女ともに免疫を持つことは「自分自身と将来のパートナーを守ることにもつながる」と話す。 日本ではHPVワクチンの公費による定期接種は小学6年~高校1年の女性だけが対象だ。男性にも任意で接種できるワクチンがあるが、3回の接種費用は5万~6万円にのぼる。 ■東京都が自治体への補助金で接種後押し 経済的な負担が高いハードルとなる中、青森県平川市が令和4年度から小学6年~25歳相当の男性へのHPVワクチン接種の費用助成に踏み切るなど、独自の取り組みを始める自治体も出てきた。 今年度は東京都が動いた。男性へのHPVワクチン接種の費用助成をする自治体に対し、かかった事業費の半分を都が補助する。 都内23区では11月現在、千代田区や新宿区など20区で、小学6年~高校1年の男性を対象に3回分の接種費用を助成。千代田区によると、当初の想定を上回る申し込みがあり、区民の関心は高いという。