コスパ最強スーパー「ロピア」 売上高10年で7倍の秘密
横浜市南部の住宅地、JR港南台駅前。子育て世帯や高齢者の胃袋をつかもうとイオンや地場スーパー「そうてつローゼン」が店を構える。10分ほど歩けば「業務スーパー」や「オーケー」もある食品スーパー激戦区に2023年12月、「ロピア港南台バーズ店」が開業した。 【関連画像】東京・丸の内のオフィスで商品パッケージを制作するOICグループの社員(写真=的野 弘路) 駅前の商業施設内に店を構える同店は、平日でも午前10時の開店と同時に客が続々と入っていく。1時間後にはレジ前に列ができていた。路線バスに乗って来店した女性客は「品ぞろえが豊富で、しかも安い」と笑顔で話す。赤いエプロン姿の店員がせわしなく商品の陳列や総菜の準備に当たる。 店内はさながら「食のテーマパーク」。目移りするほど種類豊富な握りずしのばら売りコーナーを通り過ぎた後、大容量パックが並ぶ肉売り場に足が止まる。総菜コーナーには握りこぶしほどの特大シューマイ。皮は、具を包んでいるというより載せているようだ。 店内の雰囲気も若々しく元気な印象だ。商品の特徴や安さを伝える店頭販促(POP)はカラフルで、「らりるれロピアは、らぶらぶロピア♪」と軽快なロピアのテーマ曲が流れる。お菓子売り場の頭上ではおもちゃの列車が走る。 ●粗利率20%、大量販売で稼ぐ ロピアを展開するOIC(オイシー)グループ(川崎市)は24年2月末の店舗数が約90店と、5年前から倍増した。24年2月期の売上高は4126億円に達し、直近10年間で約7倍に増えた。 近年は地盤とする関東だけでなく関西、中部でも出店を強化している。24年2月にはセブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂が撤退する北海道・東北などの店舗を引き継ぐことで合意。旧ヨーカドー8店舗を24年から順次オープンする計画で、全国区のスーパーに名乗りを上げた。同業大手の幹部も「今、最も勢いのある企業の一つ」と警戒する。 ロピアは顧客ターゲットを30~40代の夫婦に子ども2人の4人家族と定める。売り場面積600坪(約2000㎡)ほどの大規模店舗が主力で、駐車場を備えて広域から集客。1店舗当たりの売上高は年40億円程度と一般的なスーパーの2倍強だ。利益は非公表だが、粗利率の目安は20%と業界平均(26%)より低い。商品の大量販売で経費を吸収し、利益を確保する収益モデルだ。流通アナリストの中井彰人氏は「1店舗の売り上げは食品スーパーではオーケー(横浜市)と並び国内トップ級」と話す。 広域から集客する原動力が冒頭で紹介した、食のテーマパークをうたう店づくりだ。野村総合研究所の下寛和プリンシパルは「楽しく買い物できる売り場づくりに加えて、店舗ごとに品ぞろえに特色を出し、来店したくなるきっかけをつくっている」と評価する。 ●肉の大容量パックが集客商材 ロピアの代名詞となっているのが、肉のお買い得感だ。5月下旬、記者が取材で訪れた「ロピア千種店」(名古屋市)では国産若鶏モモ肉(2kg)が税込み1080円で売られていた。同店はJR千種駅から徒歩5分ほど。「この立地でこの安さは驚き。利益は出るのだろうか」。ロピアを初めて訪れた男性はモモ肉を見つめながら、つぶやいた。 流通アナリストの中井氏は「肉を大容量パックで安く売り、『集客商材』にしている」と指摘する。集客商材とは顧客を引き付ける商品を指し、利幅が大きい「収益商材」と組み合わせて利益を確保する。これに対し、ディスカウント型のオーケーは大手食品メーカーの商品を集客商材として競合店よりも安く販売している。大手の商品は他店と価格を比較しやすく、割安感を覚えやすいからだ。