【大人の発達障害かも?と思ったら】報告・連絡・相談が苦手という人に医師がアドバイス
仕事の報告や相談がスムーズにいかないと感じたことはありませんか? 昭和大学発達障害医療研究所の太田晴久先生によると、発達障害の特性が強い人にとって、コミュニケーションは悩みの種になりやすいのだそう。 【画像】大人の発達障害かも?と思ったら 「本来、人の脳の発達はさまざまで、発達障害が「ある人」と「ない人」にはっきり二分されているわけではありません。私にも、皆さんにも脳の特性があり、私たちはそのグラデーションのなかにいます」(太田先生) コミュニケーションにまつわる困りごとの傾向と対策を、太田先生に教えていただきました。
【大人の発達障害の困りごと】報告・連絡・相談をするのが苦手
明確なルールがないと行動できない特性が強い場合、あらかじめ日時が決まっていないと報告をするのを忘れてしまいます。また、情報を整理して伝えるのが苦手な場合は、報告すること自体がストレスになってタイミングを逃してしまうことも。「報連相(報告・連絡・相談)」は、上司のためではなく、自分の不安を解消したり、無駄な作業を減らしたりできる大切なやりとりであり、上司や同僚とのコミュニケーションにもなるので、「仕事が円滑に進む手助けになる」「ミスをしてもすぐに報告すれば被害は小さくて済む」とポジティブに考えましょう。 〈自分でできる対策〉 ●誰に・何を・いつ報告するか決める まずは、「誰に」「何を」「いつ」報告するのかルールを決めましょう。報告や連絡は、要点を簡潔に伝えることが重要です。頭の中だけで情報を整理するのが苦手な人は、1枚のシートに「用件」「結論」「理由」「対策(または相談)」の項目を入れたフォーマットを作り、一度文字にして書き込むと、客観的に整理しやすくなって自分で解決できる場合もあります。 ・「誰に」 基本的には直属の上司だが、それ以外にも伝えるべき人がいるかどうか、最初に確認しておく。チームで仕事をしているときは、チームリーダーやメンバーにも伝える。 ・「何を」 担当の仕事について、何がどこまで進んでいるかの報告や、共有すべき情報の連絡をする。 必要に応じて相談したいことがあれば伝える。 ・「いつ」 「報告は毎週金曜の午前10時」など、上司と曜日や頻度を決めて定期的に行う。ただし、仕事でミスやトラブルなどの問題が生じた場合は、すぐに報告・相談する。 ●声をかけるときは相手の状況をみる 報告や相談をしようとしたら「あとにして」「今?」などと冷たい対応をされて、声をかけるのが怖くなってしまった人もいるかもしれません。相手が気難しい人だっただけかもしれませんが、もしかしたらタイミングが適切ではなかった可能性もあるので、声をかけるときは下のポイントを意識しながら声をかけてみましょう。 ①相手がひとりのときに声をかける ひとりでデスクに向かっているときなどを選ぶ。計算作業中、他の人と話している、急ぎ足で移動しているなど、忙しそうなときは避ける。 ②まず名前を呼びかける いきなり要件を言うのではなく、「○○さん」と相手の名前を呼び、「ちょっと今お時間いいですか」と声をかける。緊急の場合は「○○の件で、急ぎご相談したいのですが」と伝える。 ③「いいよ」と言われてから用件を話す 「あとにして」と言われたら、「わかりました。何時頃でしたらよろしいでしょうか?」と確認する。 〈周囲ができること〉 ●叱責せず、具体的に指示をする 問題の報告にきた相手に冷たい態度をとると「報連相」への苦手意識が生まれてしまいます。具体的に指示をして立て直しを図り、「早めに報告や相談をすると問題がこじれない」という空気や経験をつくりましょう。定期的な報告のためのミーティングは、本人の様子を見ながら時間や報告の回数を加減して。 昭和大学発達障害医療研究所 所長 太田晴久 精神保健指定医、日本精神神経学会 指導医・専門医。2002年に昭和大学医学部卒業後、昭和大学附属病院、昭和大学附属烏山病院 成人発達障害専門外来などで勤務。2012年から自閉症専門施設のUC Davis MIND Instituteに留学し、脳画像研究に従事。2014年から昭和大学附属烏山病院、発達障害医療研究所にて勤務し、現在は昭和大学発達障害医療研究所 所長(准教授)。特に思春期以降の成人を中心とする発達障害の診療や研究に取り組んでいる。著書に『大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本』(西東社)など。 イラスト/hakowasa 取材・文/国分美由紀 編集/種谷美波(yoi)