円は対ドルで156円台半ば、日銀総裁の講演への警戒で買い戻しも
(ブルームバーグ): 15日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=156円台半ばで推移。156円台後半まで円売りが先行した後、下げ渋っている。18日に日本銀行の植田和男総裁が講演を行うことが発表され、12月の金融政策決定会合に向けて追加利上げを示唆するとの思惑で買い戻しが入った。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、公示仲値にかけて強まった実需の円売りが一服したところで、植田総裁の講演予定が発表されて反応したと説明。「円安が進む中で12月の追加利上げに向けた何らかのヒントが示されるのではないかとの思惑が強まった可能性がある」と語った。
もっとも円の上値が重い状況は変わっていない。朝方は米国で連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利下げに慎重な姿勢を示し、ドルが買われた流れを引き継ぎ円売りが先行。日本の7ー9月期国内総生産(GDP)発表後には日米の成長力格差が意識され、円売りが強まった。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、トランプ次期政権の拡張的な政策運営への警戒やパウエル議長の利下げに慎重な姿勢を背景に、米金利高・ドル高による円売りが続いていると指摘。「GDPがさほど強くない結果だったことも日銀の追加利上げへの不透明感につながり、円の重しになっている」と語った。
パウエル議長は14日、足元の米国経済が目覚ましく良好に推移しているとし、慎重なペースで政策金利を引き下げる余地が生じていると述べた。金利スワップ市場で12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ織り込みは4割程度に低下。金融政策への感応度が高い米2年国債利回りは約3カ月半ぶりの高水準に上昇した。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、日本時間夜に発表される10月分の米小売売上高が前月比で9月分と同様の伸びとなれば、利下げ織り込みが一段と低下しやすく、「米金利上昇とドル高が一段と進む可能性がある」と述べた。
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Daisuke Sakai