水冷っていうけど水じゃない! クルマのエンジンの冷却に使われる「クーラント」の正体とは
水冷式のクルマは冷却水としてLLCを使用する
現代のクルマ、そのほぼ100%が水冷方式の冷却システムを備えているといってよい。空冷方式は、かつての軽自動車やポルシェ(993まで)、VWビートルといったクルマで採用されてきたが、排出ガス制御(燃焼制御)のため、安定したシリンダー温度が保てる水冷が標準の冷却方式として採用されるようになってきた。 【写真】維持費とかどうなのさ? 空冷ポルシェオーナーの本音に迫る(全12枚) さて、ここでは水冷方式と呼んでいるが、正確には液冷方式である。水冷という呼び方は、空気で冷却する空冷方式に対して使われた呼び名で、現在では水を使う冷却システムは皆無となっている。現在の冷却システムには、水の代わりにLLC(ロング・ライフ・クーラント)が使われている。 なぜかというと、ふたつの理由が考えられる。まず、そのひとつ目だが、不凍液という言葉を聞いたことがあるだろうか。氷点下になっても凍らない液体で、文字どおり寒冷地での冷却液として使われてきたものだ。LLCはこの発展型にあたり、2価のアルコール、エチレングリコールがベースとなっている。ちなみに、3価のアルコールとしてはグリセリンがよく知られ、乱暴だがLLCとグリセリンは、親戚のような関係といってよいかもしれない。LLCは、冷却性能に関して水より優れた液体である。 融点が低く不凍液としての性能を備えながら、沸点も高くエンジンを冷却するために水より優れた性能を備えている。0℃で凍り、100℃で蒸発する水に比べて、広範囲な温度下で安定した性質を保っている。LLCは通常、赤や緑に着色されて市販され、原液濃度のまま、希釈濃度にして使うなど、クルマを使用する温度環境に合わせて濃度を調整することができる。 そしてもうひとつ、水ではないため防錆作用があることだ。鉄製パーツはもちろんのこと、現在は多く採用されているアルミ合金のエンジンなど、純水を入れてしまうと錆の原因となるため、防錆効果のあるLLCが使われることになる。 メンテナンスとしては、基本的にはメンテナンスフリーの部分なのだが、ボンネットを開けたら冷却液量のチェック、またLLCの色にも気をつけたい。定期的に整備を受けている車両ならLLCが変色することはまずないのだが、定期点検に出さなかったりしばらくクルマを使わなかったような場合には、液量と色のチェックは必須。 クルマの性能を正常に維持するため、LLCのチェックは基本事項といってよいだろう。
大内明彦