熟年離婚に踏み切れない日本人は変だ…和田秀樹「欧米の高齢者に学ぶ"人生後半の楽しみ方"の最終結論」
■ひとり外出で心の健康を手に入れる 60歳を過ぎると、不安やストレスが強くなり、人生の楽しみや喜びを見失ってしまう人がいます。これは「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンが加齢とともに分泌されにくくなるためです。 また、歳をとってくると、脳において感情をコントロールする部位である前頭葉の萎縮も進み、感情が衰えてきます。 こうした脳の構造的な変化に加えて、定年退職や愛する家族、ペットなどとの別れ、食欲低下や便秘、不眠などのちょっとした身体的不調が重なると、人は幸福よりも不安やストレスを強く感じ、悲観的な考えになりやすくなります。 放っておいては、うつ病に進行しかねません。 そこで重要になってくるのが、外出や旅行から得られる刺激や喜びです。 これから先、体と脳は確実に老いていきます。それでも、心だけは、自分次第でいくらでも若返ることができるのです。長年、多くの高齢者を診てきた私だから断言できることです。 60歳からの人生に心の健康より大事なものはありません。 どんどん外出しましょう。特に「日光に当たる時間を長く持つ」といいでしょう。 人間は、日光に当たることで、セロトニンが脳内で多く分泌されることが分かっています。天気のいい日に散歩をするのもいいですし、軽いスポーツやガーデニングもおすすめです。 望んだ場所に旅行に行けば、新鮮な発見や刺激が得られ、前頭葉が大いに活性化されます。 ■誰にも支配されず、帰りの時間なんて気にしなくていい 年齢を重ね足腰や認知機能が衰え、心身の活力が低下した状態を「フレイル(虚弱)」といいます。フレイルの予防こそ、来るべき70代、80代をシャキッと自立して過ごすことにつながるのです。 外に出て、散歩やウォーキングを楽しめば、足腰にも効果があるだけでなく、精神の栄養にもなります。目的なんてなくていいのです。 とにかく家を出て歩いてみれば、家の中でひとりブツブツいいながら過ごすより、はるかに気が晴れます。 まず、外に出てみる。ポケットにスマホと財布があれば、どこまででも行けるし、何より、もう誰にも支配されていないのです。帰りの時間なんて気にしなくていい身分なのです。 ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」 ----------
精神科医 和田 秀樹