”ホームレス”に小遣いをやって”マンション”を買わせる…総額50億円、「住宅ローン詐欺」の衝撃の手口とは
Netflixドラマで話題に火が点き、「地面師」はもはや国民的関心事となっている。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 11月1日・8日の「金スマ(中居正広の金曜日のスマイルたちへ)」に続き、11月20日(水)の「アンビリ(奇跡体験!アンビリバボー)」でも地面師特集が放映されるほど。これらの番組では、ネトフリドラマの参考文献になったノンフィクション『地面師』の筆者・森功氏が出演して、地面師の手口を詳しく解説している。 不動産のプロですらコロッと騙されるのだから、私たち一般人が地面師に目をつけられたらひとたまりもない。そのリスクを回避するためには、フィクションのドラマを観るより、地面師の実際の手口が詳細に書かれた森氏のノンフィクションを読むのが良いだろう。 森功著『地面師』より、特に参考になる箇所を抜粋してお届けしよう。 『地面師』連載第20回 『「覚醒剤」「脱税」「暴力団」不祥事にまみれた不動産取引…マンション開発ブームの裏で六本木の黒服が「大物地面師」になるまで』より続く
ホームレスが50億の住宅ローン
くだんの詐欺事件は2003年に繰り返しおこなわれ、2年後の2005年に摘発された。逮捕されたのは山口組系組幹部の森内正弘ら4人の犯行グループだ。森内は「シエロ・ホーム」というマンションデベロッパーを使い、ホームレスにマンションを買わせて銀行ローンを組ませるという手法で荒稼ぎしていった。その手口を田之上が解説してくれた。 「まずは、川崎あたりのホームレスを雇って住民登録をさせるんや。ほれで次に、彼らをサラリーマンに仕立てて、給料の源泉徴収票をとる。勤め先は、八百屋でも魚屋でもどこでもいいのやけど、言うたらその1つがシエロ・ホームや。経営の苦しいところを会社ごと買っておいて、そこからホームレスに給料を払ったことにしておく。とうぜん税金も納めて源泉徴収票をつくり、それをもって銀行の窓口に行って、住宅ローンを組むんですわ。銀行にしてみたら、書類はそろっとるし、保証会社の保証もつけてローンを組んでもらえるから何の問題もあらへん」 ホームレスには小遣いを渡す。が、銀行の窓口に行くのは別人だ。いわばこれもなりすましの一種といえる。犯行グループは、印鑑証明や納税証明書など、住宅ローンの申請に必要な書類を準備し、なりすまし役が何食わぬ顔で銀行と掛け合う。 そうしてホームレス1人あたり、4000万円から5000万円の銀行ローンを組ませ、偽マンション業者「シエロ・ホーム」に代金を振り込ませていったのである。森内らは、神奈川県を中心におよそ2年にわたり、横浜銀行や東京三菱(当時)、UFJ(同)、みずほなどから160件、総額50億円という巨額の融資をまんまと引き出していった。元山口組の田之上はこの手の詐欺にもやたら詳しい。
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