岸田首相「国賓訪米」での皮肉な演出が広げた波紋 公式夕食会で「YOASOBI」に興じ、“卒業”は秋?
なかでも、岸田首相が力点を置いたとされるのが日米首脳公式夕食会。訪米から3日目の10日(日本時間11日)、岸田夫妻の歓迎のため、バイデン夫妻が大統領迎賓館で主催したものだが、その中でメディアが注目したのが、ゲストの有名歌手・グループによる歌唱シーンだった。 日本から招かれたのは、国際的にもファンが多い音楽ユニット「YOASOBI」、そしてアメリカからはジル夫人お気に入りの歌手ポール・サイモン氏だった。代表曲は「恋人と別れる50の方法」、デュオ「サイモン&ガーファンクル」の「サウンド・オブ・サイレンス」。
特に後者は、半世紀以上前に世界的に大ヒットした映画『卒業』の主題歌として知られる。関係者によると、サイモン氏はジル大統領夫人が大好きなアーティストで81歳の大統領とは同世代。さらに、岸田首相も同氏の曲を好んで鑑賞していることを踏まえての人選だったとされる。 ただ、その代表曲「サウンド・オブ・サイレンス」は、世界中の観客が涙したとされる最後の場面で流れる物悲しい主題歌だ。しかも、日本側は「YOASOBI」だったため、同行記者団の間では「両首脳は“夜遊び”の果てに、秋には共に(大統領と首相から)“卒業”するとの未来を暗示している」との皮肉めいた反応が語られていたとされる。
一方、この公式晩さん会の翌日の11日午前(日本時間12日未明)、アメリカ連邦議会の上下両院合同会議での岸田首相の演説とその反応も、日本のメディアがこぞって取り上げた。日本の首相としての議会演説は、2015年の安倍晋三元首相(故人)以来、2人目だったが、岸田首相がいつものメモの棒読みではなく、議場内を見回しながらふんだんにジョークを盛り込んで語り、随所でスタンディングオベーション(立ち上がっての拍手喝采)を受けたことが、大きな話題となったからだ。
まず、演説の冒頭に、岸田首相が「日本の国会では、これほど素敵な拍手を受けることはまずありません」といたずらっぽい笑顔でジョークを飛ばすと、議会内は盛大な笑いと拍手に包まれた。さらに岸田首相は、自らが小学校時代をニューヨークで過ごしたことを紹介したうえで、当時のアメリカでの人気アニメ「原始家族フリントストーン」の決め台詞にも触れて再び笑いを誘うなど、「生真面目さが売り物のはずの岸田首相の、新たな一面」(官邸筋)を披露してみせた。