3代目ご老公からは「あり得ない」と言われ…里見浩太朗が明かす「水戸黄門」の舞台裏 新シーズンの第1話に“火事”のシーンが登場する理由
3代目黄門様から「あり得ない」と言われ
《3代目の黄門様・佐野浅夫さんは、実は里見さんの親戚筋にあたる》 そう、うちのお袋の従兄弟にあたるんです。あの人は、芝居に対してくそ真面目で、非常にシビアな人ですね。それは、劇団民藝で滝沢修さんや宇野重吉さんらに囲まれて芝居する中で叩き込まれた、ふざけた芝居は許されないという信条ゆえなんでしょう。 でも、「水戸黄門」という娯楽時代劇の中では、ちょっとおふざけの場面もあるし、くだけた芝居も必要です。それを「不真面目だ」「田舎芝居だ」と貶(けな)されたら、誰だって怒りますよね。 《佐野さんは、本誌の取材に一度、〈石坂(浩二)さん(4代目黄門様)の「水戸黄門」を観ましたが、私がやっていた頃とはあまりに違って、怒りで血圧が上がってしまい病院に運ばれた〉。里見さんの演技にも〈黄門様が杖を振り回すなど、あり得ない〉と語ったことがある》 いや、実はおじさんだって、殺陣師を付けて杖での立ち回りをやっているんですよ(笑)。その点だけは、ちょっと違うと言いたいね。この間、長門裕之さんの葬儀で会って、「おじさん、久しぶりだね」と言ったら、「おう。こんな時にしか会えねえな」と。傍にいた三田佳子さんは、「変な親戚!」と笑っていましたが。
視聴率に火をつけようとしたら……
《01年、第29部から登場した4代目黄門様には当初、トレードマークの白髭がなかった》 石坂浩二君は、史実では隠居した時に光圀公には髭がなかった、その史実通りに演じたいと髭のない黄門を始めた。でも、ナショナル劇場の「水戸黄門」というのは、「水戸黄門漫遊記」という講談話が原点なんです。白髪、白髪のご隠居がうっかり米俵に座って、農民の婆さんに箒で叩かれる、そういう世界。 そもそも諸国漫遊じたいが作り話なのに、史実通りの黄門様をやりたいと言っても視聴者が拒否反応を示すのは当たり前。だから、第2シーズンからは髭を生やしましたが……ナショナル劇場の「黄門様」についての考えが違ったんですね。 《26年にわたる「水戸黄門」出演でご自身の失敗談は? と水を向けると“それが、一つもないんだよ”と爽やかに笑う里見さんだが、こんな逸話を披露してくれた》 「水戸黄門」は、“視聴率に火をつけよう”という験(げん)担ぎで、第1話によく「火事」のシーンを作っていたんです。あるシーズンでは、悪者が茶屋に火をつけ、黄門様一行が弥七の誘導で逃げるシーンを撮りました。 「はい、カット」となって消防車が火を消したんだけど、まだ臭う。おかしいなと思ったら、大きな火の粉が落ちたらしく、山口いづみ君の鬘の頭頂部がボーボー燃えている。幸い火傷はしなったけど、ロケはそこで中止となりました。 *** 役者ごとに微妙な違いがある黄門様。皆さんの心に残っているのは何代目だろうか。第1回【「大岡越前」キャストとの豪華ゴルフコンペも 里見浩太朗が明かす「水戸黄門」秘話…「撮影の合間にご老公や弥七と将棋のトーナメントをしていましたね」】では、撮影中に老いの波と戦った東野英治郎さんの様子などを明かしている。 デイリー新潮編集部
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