シャンパーニュ最古のメゾン・ルイナール、フランスの最新パビリオンに潜入
1729年にフランス・ランスの地でニコラ・ルイナールによって設立された、世界最古のシャンパーニュメゾン、ルイナール。2029年の創業300周年を前に、メゾンは新しい1ページを刻んだ。 【写真9点】シャンパーニュ最古のメゾン・ルイナール
コントラストが生む、美しく静謐なハーモニー
まるで石灰石がくり抜かれたような小路を抜けていく。目の前に現れたのは、流線形の白亜の建物。世界的建築家の藤本壮介氏が手がけたニコラ・ルイナール・パビリオンだ。 世界最古のシャンパーニュメゾン、ルイナールの新しいパビリオンが2024年10月に完成した。ここは訪れたゲストにブランドの世界観を伝える特別な場所。シャンパーニュの泡からインスピレーションを得た建物は、光によってさまざまな表情を見せていく。モダンで軽やかな建築は、敷地内の左右対称で重厚感が漂うメゾンの歴史的建造物と対峙するように建つ。藤本氏は言う。 「ルイナールは300年近くの歴史がありながら、最先端の現代アートにコミットするなど、非常にチャレンジングなメゾン。今回の建築では、美しいコントラストとハーモニーを同時に生むものをつくりたかった。エレガンス、静けさ、サステナビリティを重要視しました」 中庭に面したガラスのファサードは、白から透明へとグラデーションがかかり、柔らかく光を空間に取り入れる。館内にはレストラン&バー、ラウンジ、ブティックがあり、いずれもがボーダーレスにひとつの空間としてつながる。その開放的でコンフォートな空間を手がけたインテリアデザイナーのグエナエル・ニコラ氏は言う。 「パフュームにファースト、セカンド、サードノートがあるように、いいデザインには最初に驚きがあり、次にワクワクしてもっと見てみたくなるものがある。そして最後は気持ちよく余韻に浸れる。シャンパーニュのようにレイヤー、レイヤー、レイヤーで重なっているのです」 敷地の地下は、クレイエルと呼ばれるローマ時代の石切り場で、現在はセラーとして使われている。庭園には現代アートの数々がちりばめられ、メゾンの象徴である歴史的建造物、環境に配慮したモダンなパビリオンと相まって、ゲストをルイナールの過去、現在、未来へといざなう。つまり、ここは時間を超越した豊かなシャンパーニュ体験のための場所なのだ。 今、煌びやかにメゾンの新たな歴史の幕が開かれた。