ほぐすと疲れがとれるのは「肩」でも「腰」でもない…翌朝シャキッと動ける人が寝る前に揉んでいる"意外な部位"
■深部まで常に柔らかい身体を目指そう 回復能力の高い身体をひと言で表すと、「身体の深部まで常に柔らかく(固まりにくく)、循環(血液とリンパの流れ)がよい状態」です。 リカバリートレーニングのゴールは、このような身体づくりにあると思ってください。 先にお伝えしたように、「柔らかい」といっても、単に柔軟性があるということではありません。重要なのは深部、いわゆる内臓や皮膚など、あらゆる器官まで柔らかいことです。 このような状態が維持できれば「循環がよい状態」と言えますし、練習やトレーニングで多少疲労しても、疲労が蓄積することなく、素早く回復できるようになります。逆も然(しか)りで、循環がよいと柔らかさは保たれます。 さらに力を抜いたときにはフニャフニャに、力を入れたときには鋼鉄のように、抜き入れの幅が大きい、そんな筋肉の状態をリカバリースキルにおける「柔らかさ」と定義しておきます(拙書『最強の身体能力 プロが実践する脱力スキルの鍛え方』で紹介した考え方にも通じます)。 身体には「柔らかさ」と「循環」を高めるさまざまな仕組みが備わっているので、リカバリートレーニングではその仕組みを利用していきます。 ■身体を柔らかくするのに重要な「横隔膜」 その一つが、特定の部位に現れる「固さ」です。 疲労の症状は特定の部位が「固くなる」ことでわかるとお伝えしましたが、疲労の種類と固くなる部位をあらためて整理すると、次のような相関関係があります。 ---------- ・筋肉疲労:ふくらはぎを中心に、下半身全般が固くなる ・内臓疲労:お腹が固くなる ・脳疲労:後頭部や側頭部、目や耳の周りが固くなる ・精神疲労:胸椎や胸骨、お腹が固くなる ---------- 「深部まで柔らかく」と言われても、たとえば内臓が柔らかくなったかどうかを自分で確認することはできませんよね? ですが、お腹の固さを確かめることで、相対的に内臓の状態を知ることができます。 リカバリートレーニングでは、固さが現れる場所を「重点ターゲット」として設定しています。これらは固さが出やすくなる「要因」に関わる場所も含むので、筋肉だけでなく、関節や内臓なども該当します。 いつでも全身をくまなくケアできる時間があればいいのですが、そんな余裕はない人がほとんどのはずです。 そこで、典型部位を最小限に絞って「重点ターゲット」とし、集中的にアプローチすることで、最小限の労力で最大限の能力を引き出すことができるようになっています。重点ターゲットは次の4つです。 ---------- (1)ふくらはぎ (2)横隔膜(内臓やお腹の血管) (3)胸椎と胸骨とお腹(特にへそ上) (4)目や耳などの感覚器 ---------- 身体を深部から柔らかくする目的において、もっとも重要なのは横隔膜の働きです。 なぜかというと、 (1)横隔膜が上下に動くことで内臓をほぐす⇒身体の深部から柔らかくする (2)腹圧を保ち、土台となる腹部・腰部を安定させ、腕や脚の力が発揮されやすくなる⇒腰や腕・脚を酷使しなくてすむ という二つのメリットがあるからです。