DMG森精機・不二越…EV・ロボ普及で引き合い増「減速機」需要開拓へ、進化する歯車加工の世界
内・外歯車対応
工作機械各社が歯車加工への対応を加速している。DMG森精機は同時5軸加工機をベースに歯車の加工や仕上げの研削まで1台で可能な仕組みを開発した。不二越は歯車研削盤市場に参入し、ニデックマシンツール(滋賀県栗東市)は歯車研削から全数検査まで自動化するシステムを確立した。電気自動車(EV)やロボットなどの普及で減速機の引き合いが高まっており、主要構成部品の歯車の効率的で高精度な加工需要を取り込む。(編集委員・西沢亮) 【写真】ニデックマシンツールの歯車研削から全数検査まで自動化するシステム DMG森精機は5軸制御立型マシニングセンター(MC)「NMV5000DCG」に独自の歯車研削ユニットなどを搭載して受注を始めた。加工対象物(ワーク)の旋削やミーリング、ギアスカイビングによる歯車の荒加工、仕上げ研削までの各工程にバリ取りも含めて1台で対応する。研削時は機内に格納していた歯車研削ユニットを自動で主軸に装着し、歯車の位相を検知して歯合わせをしながら1歯ずつ自動で成形研削する。 内歯車と外歯車の両加工に対応し、加工精度は「ISO4級」。ある歯車では、旋盤や歯車加工専用機など複数台の機械で加工していた従来と比べてサイクルタイムを約47%短縮できたという。同社担当者は「歯車の加工から研削まで工作機械1台に工程を集約できる機種は初めて」と自信を示す。こうした歯車加工の課題解決策を「GearProduction+(ギヤプロダクション・プラス)」として順次開発して展開し、対応機種を拡大していく。 不二越は歯車研削盤「GSGT260」を開発。「これまで歯車用の工具や加工機で培ったノウハウを活用する」(同社幹部)ことで、高い精度や能率の研削加工を実現した。外歯車の加工に対応し、加工精度は「新JIS1級」。 複数の歯を同時に創成研削し、EV用駆動装置「イーアクスル」の減速機向けなど量産部品の加工需要を取り込む。
全数検査自動化
歯車加工機大手のニデックマシンツールは、同社の歯車研削盤に同じグループのTAKISAWA製ワーク搬送用ロボットや、スイスのクリンゲルンベルグの計測装置を組み合わせ、歯車の研削から加工品質の全数検査までを自動化するシステムの提案を始めた。クリンゲルンベルグの歯車かみ合い試験装置は、内蔵するマスターギアに研削後のワークをかみ合わせて振動や伝達誤差を計測する。 同試験装置でワークを全数計測し、不良と判定したワークのみプローブ式の歯車測定機で計測して詳細を把握する。全数計測にかかる工数や時間を大幅に短縮しつつ、「詳細な計測データを基にした分析結果を歯車研削盤にフィードバックして微修正し、歩留まりを改善し続ける好循環につなげる」(同社幹部)。 イーアクスルの減速機向け歯車の加工精度や品質は電動車の燃費、振動、騒音に影響し、顧客の要求水準が高まっている。全数検査を含めて工程を効率化し、歯車研削の多様な需要に対応する。 歯車の加工は車の電動化や人手不足などを背景に、イーアクスルの減速機やロボットの精密制御減速機向けの需要拡大が見込まれる。富士経済(東京都中央区)は2025年に国内の歯車加工向け工作機械市場が21年比38・9%増の2488億円になると予測。工程集約や少量多品種生産のニーズに伴い、MCの機能を加えた複合加工機の活用も期待されるとしている。