アルファ・ロメオ初のSUV、完成まで「13年」も彷徨った苦難の開発 歴史アーカイブ
度重なる方針転換
しかし、2006年3月になっても完成を見ることはできなかった。アルファ・ロメオは、ハッチバックやセダンの売れ行きが回復するまではSUVを発売できないと公式に表明し、カマルの開発プロジェクトを凍結した。 現在のアルファ・ロメオの経営陣が、SUVのラインナップが充実するまでは新しいハッチバックやスポーツカーを売ることはできないと語っていることを考えると、皮肉なものだ。 とはいえ、同社関係者によれば、カマルはまだ「かなり検討中」だったという。2007年8月、プロジェクトは再び動き出した。 「CXOver」というコードネームが与えられ、147の後継モデルのプラットフォームを使い、フィアットのクロスオーバーと兄弟車になる予定だった。 ターボガソリンとディーゼルを導入し、予定価格は1万9000ポンドから3万ポンド(現在の価値でおよそ3万~5万ポンド/約600万~1000万円)とされた。クーペのようなルーフラインを除けば、すべての点で当初のカマルの概要とは明らかに異なっていた。 発売はミラノ(後にジュリエッタに改名)に続く2010年に予定され、同社関係者はベースの大部分がカマルであると話していた。しかし、そのころにはアルファ・ロメオは高級クロスオーバー市場で出遅れていた。 BMWはすでにX1のプロトタイプのテスト走行を繰り返しており、アウディはQ3を予告するクロスクーペ・クワトロというコンセプトを公開し、ランドローバーもレンジローバー・イヴォークの前身となるLRXコンセプトを披露していた。 フォルクスワーゲン・ゴルフと同等サイズのSUVが登場するという話は尽きなかったが、前回と同じように、3年が過ぎても実質的な成果はほとんど見られなかった。
ようやく完成したステルヴィオ
2010年1月のデトロイト・モーターショーで、フィアットのセルジオ・マルキオンネCEOは「アルファは長い間、業績不振に陥っている」と指摘し、4月にはブランド再編を発表した。 2011年9月、アルファ・ロメオのSUV発売はさらに延期され、今度は2013年となった。 翌年1月、マルキオンネ氏はこの動きを擁護し、159の発売を急がせた過ちを「二度と繰り返さない」と述べた。「アルファの新型車は準備が整い次第発売する。無理強いされることはない」 SUVのプラットフォームは、2014年の発売が噂されていたジュリアと同じものに移行されたが、完成品であるステルヴィオを見ることができたのは2016年になってからだった。 ありがたいことに、待った甲斐があった。ステルヴィオは、カマルのDNAの痕跡はあまり感じられなかったが、AUTOCARが見た中で最高クラスのドライバーズSUVだった。手短に言えば、何年も平凡な前輪駆動に甘んじてきたアルファ・ロメオの本来あるべき姿である。 来年には第2世代のステルヴィオが登場し、ハイブリッドとフル電動モデルに切り替わる予定だ。 しかし、ステランティスの最近の介入と、新ブランドCEOのサント・フィシリ氏の采配により、今後どうなるかは誰にもわからない。
チャーリー・マーティン(執筆) 林汰久也(翻訳)