こんにゃくでつくったマグロの味は──植物由来の「代替シーフード」が目指すもの
「大豆ミート」など、代替肉の市場は拡大を続けているが、植物由来の「代替シーフード」も少しずつ開発が進んできた。三重県の食品メーカーが販売を始めた、こんにゃく原料の「まるで魚」シリーズもそのひとつ。背景には、水産資源の枯渇に対する危機感もある。これら代替シーフードは、食の「新しい選択肢」となるのだろうか。(ジャーナリスト・室橋裕和/撮影:菊地健志/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
見た目は刺し身、触るとこんにゃく、味は?
きれいにスジの入ったマグロの赤身、脂の乗ったサーモン、つやつやのイカ……。実はこれ、本物の魚ではない。すべてこんにゃく粉でつくられた、水産資源を消費しない「代替シーフード」なのである。三重県の食品メーカー・あづまフーズが開発した、その名も「まるで魚」シリーズだ。マグロ、イカ、サーモンの3種類がある。
さっそく居酒屋に全種類を持ち込んで、調理をお願いしてみた。旬の魚を使った海鮮料理などが評判の、神奈川県日吉にある「サカバ日吉MARU」。料理人の八木康次さん(36)は「まるでマグロ」に包丁を入れながら言う。 「触った感じも、切っている感触も、こんにゃくそのものですね。『魚の繊維』もそう見えているだけで、実際にはありません。すっと包丁が入っていく」 見た目は魚の柵なのに触るとこんにゃく、その不思議な感覚に戸惑っているようだが、さすがはプロ。「まるで魚」が見事なお造りとすしに姿を変えた。
口にしてみると、なるほど確かに舌触りはこんにゃくだが、刺し身のような食感でもある。とくにイカはなかなかリアルだ、と八木さんは言う。 「本物のイカは表面が少しざらざらしているんですが、それが表現されています。飾り包丁もしっかり入れられます。切りやすいし、魚の脂がつくこともないので加工しやすそうですね」(八木さん)
味をなじませるものはどうだろう、と続いて「まるでマグロ」「まるでサーモン」をカルパッチョにしてもらった。狙い通り、これはいける。油で和えることで、こんにゃくがだいぶ刺し身に近づいた気がする。 それなら次は火を通したら……とパン粉をつけて揚げてもらったが、「脂がないので粉がうまくつかないですね」と難しそう。結局マグロとサーモンは溶けてしまったが、イカはしっかり衣がつき、タルタルソースをつければ「まるでイカ」。これはビールに合いそうだ。