こんにゃくでつくったマグロの味は──植物由来の「代替シーフード」が目指すもの
おすすめレシピは昆布締めと味噌和え
「欧米ではすでに、大豆ミートなど肉の代替食品がブームになっていますが、水産の代替品はまだほとんど存在しません。ビジネスとしての広がりがあると考えています」 そう語るのは、あづまフーズ海外事業部の松永瞭太さん(29)。同社は居酒屋向けなどの業務用食品をおもに手がけており、あの「たこわさび」を生み出したことでも知られる。ほかにも多数の「珍味」を生産している。 「魚卵を色づけした商品もあるのですが、原料となるトビウオやシシャモが不漁でまったく獲れない時期があったんです。そこで白キクラゲを魚卵風にしたものを開発しました。そんなことから、水産品に頼らない新しい素材にも着目しようと考えるようになりました」 世界的に枯渇しつつある海の資源。それは水産加工会社だからこそ、強く感じる。 その「危機感」が、「まるで魚シリーズ」開発の原動力となった。 ベースになったのは台湾の食品メーカーがつくった商品だ。 「菜食文化が根づいている台湾ではベジフードが広く普及していて、代替肉の企業もたくさんあるんです」 台湾は、いわば菜食の先進国。代替シーフードを扱う台湾の食品メーカーが、あづまフーズの協力のもと、日本の市場に合わせて既存の商品に改良を加えていった。 原料はこんにゃく粉や増粘剤だが、その配分の具合でマグロ、サーモン、イカそれぞれの食感の違いを出しているという。10人ほどの社員で試食会を重ね、どんなレシピが合うのか試行錯誤を繰り返した。
「イカなら昆布締めがいいでしょうか。マグロやサーモンには本物の魚と違って脂が含まれていないので、少しオリーブオイルをかけるとトロっぽくなります。合わせ味噌に、ぶつ切りにした『まるで魚』を和えるのもおいしいですね。エスニック風にしようとスイートチリをかけたりしましたが、甘いソースは合いませんでした」(松永さん) あづまフーズは「ソイマイスター」のブランドで大豆ミートも扱う。年間およそ2500万円を販売し、同社の売り上げ上位10品目に入る。「まるで魚シリーズ」もそのくらいに成長してくれたら、と松永さんは話す。 「社内では、『水産加工の会社が水産代替品を売るなんて、ちぐはぐなことはすべきじゃない』って声もありました。でも、水産品にお世話になってきた会社だからこそ、伝えられるメッセージもあるんじゃないかと思うんです」