【専門家が警鐘】今すぐ確認。誰もが精神疾患になり得るから、絶対にはずせない「たった1つの手続き」
うつ病、統合失調症などの精神疾患は、誰がかかってもおかしくない病気だ。2004年に国は、国民の5人に1人は精神疾患にかかると言われている、と警鐘を鳴らしている。2022年には、発達障害と思われる子が教育現場で増えているとの調査結果も報道された。 【画像】死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 だれが疾患に見舞われてもおかしくないこの時代、リスクに備えて何ができるだろうか。精神保健福祉の専門家で、『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』など多数の著作がある青木聖久教授(日本福祉大学)が解説する。
地域を耕すことが必要だと考えて進んだ道
私は、16歳(高校2年生)の春に「社会福祉の仕事につきたいから、日本福祉大学に進学する」と周囲に宣言。その後、21歳(大学4年生)の時に、1人の精神疾患がある人と出会ったことが大きなきっかけとなり、岡山、兵庫の地で、ソーシャルワーカーとして18年間、多くの発達障害や精神疾患がある人の支援に携わってきました。 その一方、障害がある人や家族へのかかわりもさることながら、地域を耕すことが必要だと考え、社会への普及・啓発活動に本格的に取り組むべく、18年前の2006年から母校に戻って教員として勤めています。ふりかえると、「福祉の仕事につきたい」と宣言してから40年以上の月日が経過したことになります。 現在の私は、障害がある人の経済的支援の研究に取り組んでいます。なぜか。それは、障害がある人や家族にとって、経済的な事柄は、現実の待ったなしの課題だからです。ここに取り組まずして何を、という思いを常に持っています。 本稿では、経済的支援のなかでも中心的な制度である障害年金について、エピソードを交えながら、最も大切な「肝」といえることをお伝えしたいと思います。
「こんなうまいもん食べたの、産まれて初めてです」
関西地方で暮らしていた山口さん(仮名、30代、男性)は、精神疾患をかかえておられました。アパートで単身生活をしていたのですが、いつも経済的にぎりぎりの生活でした。アルバイトと親からの仕送りで、かろうじて暮らしが成り立っている状態で、外食なんて、とてもできません。いつも白飯を炊き、卵かけご飯にして食べるという、あまりにもつましい食生活でした。 私が山口さんと出会ったのは、そのようなさなかです。障害年金のことを紹介したところ、20歳前に精神科の初診日があることがわかり、障害基礎年金2級を受給することができました。そして、偶数月の15日に約13万円(当時)が定期的に入金されることになったのです。 山口さんは精神疾患の症状のため、身体が重くて「動けない」と感じることがありました。それでも彼は必死にアルバイトに行き、自炊もしていたのですが、頑張って動いたせいで本当に動けなくなってしまったこともありました。明らかに、彼の限度を超えた無理をしていたのでした。 しかし障害年金によって、彼は限度を超えた無理をする必要がなくなりました。食生活にも、それまでにはなかった、ちょっとした豊かさが出てきました。たとえばある日、山口さんは住んでいるアパートの隣にある弁当屋で、鳥そぼろ弁当を初めて買って食べたそうです。 翌日、山口さんは満面の笑みを浮かべ、こう私に話してくれました。 「青木さん、こんなうまいもん(鳥そぼろ弁当)食べたの、産まれて初めてです」 山口さんは、さらに続けます。 「青木さんね、これまでは、生きるためにお腹を満たすことしか考えなかったんですよ。でも、食べることを楽しむというのもいいですね」 それから約10年後、彼は亡くなりました。しかし私は、鳥そぼろ弁当を見ると、いまだに彼のとびっきりの笑顔を思い出してしまいます。