【専門家が警鐘】今すぐ確認。誰もが精神疾患になり得るから、絶対にはずせない「たった1つの手続き」
「自由になるお金」が持つ力
さて、障害年金を受給する前の山口さんの生活は、厳しいものがありました。でも、親御さんから仕送りをもらっていましたので、ある意味、生活自体は、できないこともありませんでた。 でも、なのです。鳥そぼろ弁当が贅沢な食事だとは決して思いませんが、山口さんにとっては、いつもより贅沢と思われるような、外食やレジャーに、親御さんからもらったお金をつかうことは許されませんでした。そこに彼の「生きづらさ」が現れていたといえます。 しかし、障害年金がその状況を変えてくれました。障害年金は、生きづらさをカバーするために受給している所得保障。山口さんにとっては、自らの裁量で使える、まさに、「自由になるお金」でした。障害年金を受給してからは、彼の暮らしの幅は大いに広がることとなったのです。鳥そぼろ弁当は、ささやかな広がりの、その一端だったのです。
障害年金で忘れてはならない「国民年金保険料」
もしかすると山口さんと同じような立場の方が、この記事を読んでおられるかもしれません。どのようにすれば、障害年金を受給できるか……そんな疑問がわいた方もいるでしょう。詳しいことは後編記事に譲るとして、ここでは私がとくに大切と考えていることを1つだけ、書いておきたいと思います。 これまでソーシャルワーカーをしてきて、私がとくに多くの人に伝えたいと思っているメッセージのひとつが、これです。 「国民年金保険料(以下、年金保険料)の未納期間を作らないようにしてください」 とはいえ、2024年度における国民年金の1ヵ月の保険料は、1万6980円。高いです。「とても払えません」という人もいるでしょう。であれば、年金保険料の免除制度があります。学生であれば、学生納付特例制度もあります。 なぜここで年金保険料にこだわるかというと、未納期間が多いと、一生「無年金」になる可能性があるから、つまり「年金がもらえなくなる(もちろん障害年金ももらえなくなる)から」です。一方、免除手続きなどをしておけば、障害年金の保険料納付要件では、保険料を納付していることと同じ扱いになるのです。 世の中には、免除制度を知らず、「高い国民年金保険料を払わなくても、いずれ、会社で雇用されたら厚生年金保険に入ればいい」と、未納のまま放置してしまう人が少なからずいます。 ところが、未納期間が続くなかでケガをしたり、疾患にかかったりすることが、現実の社会生活では大いにあり得るのです。 傷病を負い、病院で治療を受けたあとで「今から年金保険料を払いますので」と役所に申し出ても、障害年金の支給は認めてもらえません。なぜなら、障害年金の要件のなかには、「初診日の前日において」年金保険料を一定期間以上にわたり納付済みであること、という文言があるからです(この点について、詳しくは後編記事を参照してください)。 つまり、必要になってからあわてて年金保険料を支払っても、障害年金では認めてもらえないということです。 ですので、20歳になったら年金保険料をきちんと納付するか、それが難しければ役所に行って、免除手続きをしてください。10分程度の手続きで済みます。ほんの10分程度の手続きをするかどうかが、無年金になるか・否かの分かれ目になるのですから、若い読者にもぜひ知っておいてほしいと思います。