「ムヒ」、アンパンマン起用の理由 かゆみ退治の主人公 池田模範堂「ムヒ」(下)
症状や年齢層などに沿った多彩な商品を研究開発
今に至る多彩な商品ラインアップを導いたのは、症状や使いやすさ、年齢層などの軸に沿った研究開発だ。商品企画に当たっては「縦横のマトリックスを組んで、多様なケアを提案している」(小嶋氏)という。 「一口にかゆみといっても原因や症状は様々。大人と子どもでは使い方も異なる。個別に対応する取り組みが望ましい」(小嶋氏)。看板商品の「ムヒS」は多様なかゆみの症状に使われるが、専用商品群の開発によって、個別の症状に応じて効果的にケアできるようになった。 例えば、2001年発売の「デリケア」はデリケートエリアのかゆみ止め薬だ。2006年には男性向けの「デリケアエムズ」も登場した。自分だけで悩みを抱え込んでしまいがちなかゆみを抑える治療薬の登場は、ひそかなストレスを和らげる福音をもたらした。
「非・虫刺され」系のヒット商品相次ぐ
虫刺され対策から始まった「ムヒ」シリーズは2000年代を迎えて、ケアの対象を格段に広げていった。2007年に発売した「ヒビケア」はその好例だろう。ひび・あかぎれなどの症状を和らげる薬だ。 虫刺され対策の伝統が長く、売り上げ面でも稼ぎ頭だっただけに、社内では売れ行きを疑問視する声が少なくなかったようだが、結果は大ヒット。夏場に偏りがちだった売り上げバランスの面からも理想的な商品となった。 「非・虫刺され」系のヒット商品はさらに続いた。2012年発売の「ムヒHD」は頭皮のかゆみが主なターゲット。マーケティング調査の結果、性別を問わず、頭皮のかゆみに困っている人が少なくないと分かって研究を進めた。こちらもシーズンに関係なく売れる通年商品に育った。
いらだちや不快感に解決策を用意する商品開発
用法で違いを際立たせたのは、2015年に発売した「ムヒAZ錠」だろう。「ムヒ」シリーズの大半は肌から作用する「塗る・貼る」タイプだが、こちらは飲む錠剤だ。様々なかゆみを抑える。広い範囲のかゆみや、塗るのが難しい場所、人前で塗り薬が使えない場合などに向く。 本人以外には気づき得ないような、いらだちや不快感に解決策を用意する商品開発は池田模範堂の商品力の源泉だ。商品開発に携わる社員にとどまらず、「社員全員でニーズを掘り起こす企画・開発の体制が多様な商品群につながっている」(小嶋氏)。 とりわけ、重要な情報源となっているのはお客様相談窓口だという。耳に使えるかゆみ・皮ふ炎治療薬「ムヒER」は「耳に塗れるかゆみ止めを求める顧客の声が開発のきっかけになった」(小嶋氏)。 音楽を聴くのにイヤホンを使う人たちの間で、耳のかゆみに悩む人が増えているという。オンライン会議の増加はヘッドセットを使う機会を増やしている。商品化に当たっては、「綿棒に適量をしみ込ませやすい特殊な容器を開発し、使い勝手を高めた」(小嶋氏)。