「ムヒ」、アンパンマン起用の理由 かゆみ退治の主人公 池田模範堂「ムヒ」(下)
2025年春から始まるNHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』は『アンパンマン』シリーズで知られる漫画家、やなせたかし夫妻がモデルだ。今ではたくさんの商品・サービスにあしらわれているアンパンマンだが、国内の医薬品業界で最初に商品キャラクターとして使ったのは、池田模範堂の子ども向けかゆみ止め薬「ムヒパッチ」(現在の商品名は「ムヒパッチA1」)。アンパンマンを起用した理由には、かゆみや肌トラブルに悩む人に寄り添う池田模範堂ならではの思いがあった。(前回の記事<「ムヒ」は語源もシェアも無比 富山から全国ブランドへ>) 赤いキャップに青い商品名のチューブでおなじみの虫刺され薬「ムヒS」は国民的な常備薬といえるだろう。「ムヒ」のブランドが生まれた1926年から約100年の間に、「ムヒ」の名前を冠する商品群は広い裾野を成した。「ムヒパッチ」もその一例。1990年の発売にあたってはアンパンマンをキャラクターに迎えた。 「ムヒパッチ」が優れていたのは、「子どもがかゆい部分をかきむしってしまうのを防ぐ構造を取り入れた点だった」と、取締役の小嶋善彦研究所長は振り返る。それまでの塗るタイプとは異なり、「パッチ」の名前が示す通り、貼るタイプなのも画期的だった。
「親しみやすさを感じてもらうにはこの上ないキャラクター」
子どもはかきむしりを我慢しにくい。うっかりかき過ぎてしまうと、症状が悪化しかねない。だから、かゆみを止めるだけではなく、かきむしりを防ぐ仕組みが必要だ。患部を覆うパッチは有効だが、子どもが剝がしてしまうおそれがある。ここでアンパンマンの登場だ。 パッチの表面にアンパンマンの絵柄があれば、剝がしを防ぎやすく、貼ってもらうのを喜ぶ効果も期待できる。こうして子どもたちに愛されるアンパンマンは肌も守ってくれる存在になった。アンパンマンを好む孫の様子を見て、当時の専務取締役が発案したという。 アンパンマンは「親しみやすさを感じてもらうにはこの上ないキャラクター」(小嶋氏)。その後も池田模範堂の商品で相次いでキャラクターに採用され、「ムヒのこどもかぜシロップS1」や「ムヒのキズパッド」などのシリーズを生んだ。子どもたちから圧倒的な人気を得ているアンパンマンは、医薬品に抵抗感を覚える子どもたちを落ち着かせる効果を発揮しているようだ。 「ムヒS」がヒット商品になって以降、かゆみを抑える商品を相次いで開発した。1973年発売の「ムヒ・ベビー」は日本初の子ども向けかゆみ止め薬。1995年には乾燥に伴うかゆみを抑える「ムヒソフト」を発売した。