「緑の重商主義」が世界を覆う:日本は20兆円「GX経済移行債」で何を目指すか
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米国と欧州がいま地球温暖化対策を大義名分に激しいつばぜり合いを演じている。日本の岸田文雄政権がGX(グリーントランスフォーメーション)と呼ぶ脱炭素戦略を、経済政策の大黒柱に位置付けた。脱炭素に向けたルール作りや技術開発で自らの産業競争力を強化する。グリーンの衣をまとった産業囲い込み、いわば緑の重商主義が世界を覆っている。 岸田政権は2月10日に「GX実現に向けた基本方針」として閣議決定した。2050年に温暖化ガス排出の実質ゼロという国際公約を実現するために、官民が目標とする投資額は今後10年間で150兆円余り。国内の投資が少ないとされる日本にとって150兆円は相当な規模であるが、民間企業だけでは不確実性の高い投資の実行は難しい。 脱炭素で新技術の産業化に成功すれば、世界中の需要を取り込めるカネのなる木となる。ただそうは言っても、事業を短期的に採算に乗せるのは難しい。そこで脱炭素に向けた「死の谷」を飛び越えるために、政府の出番となる。主要国ではまず欧州が温暖化対策を看板に緑の産業政策で先鞭をつけ、米国はバイデン政権が一気に巻き返しに出た。
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滝田洋一