自民党の「派閥」はなぜ生まれた? 功罪と栄枯盛衰、そして解消宣言まで
「裏金」問題と派閥解消、2024年の総裁選
2023年11月、いわゆる派閥「裏金」問題が表面化した。安倍派を中心とした派閥において、政治資金パーティ収入を所属議員にキックバックしていたものの、それを政治資金収支報告書に記載していなかったことなどが明らかになったのである。東京地検特捜部による捜査の結果、2024年1月に安倍派、二階派、岸田派の国会議員や会計責任者らが政治資金規正法違反の罪で立件された。 この事件によって、派閥は世論の厳しい視線にさらされることとなった。そのため、岸田派を皮切りとして、安倍派、二階派、森山派、茂木派が相次いで解散を表明した。麻生派以外のすべての派閥が解散することになったのである。ただし、本稿掲載時点において、各派閥とも定例会合は中止したものの、岸田派と森山派を除いては政治団体の届出を取り下げていない。 このような中、9月27日に自民党総裁選が投開票される。現行の仕組みでは過去最多となる9人が立候補した。これだけ多くの候補が総裁選を戦うのは、岸田首相が不出馬を表明したこともあるが、やはり、派閥解散表明を受けて派閥の縛りがなくなっていることが大きい。派閥の枠組みを越えて候補を支援する動きや、逆に派閥メンバーが結束して支える動きも見られる。 この点を見ると、派閥が本当に解消されるのか、それとも結局は残存するのか、今回の総裁選はその岐路になる可能性がある。将来を予想するのは難しいが、私見では、上述のように総裁選の仕組みがある以上、党内で地盤を固めようとする動きは消えることはないように思われる。形式的に派閥が解消されても、「派閥的なもの」は残っていくのではないだろうか。
------------------------- ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など