来年も日本開催に期待していい!? ゴルフの奥深さを感じたZOZOチャンピオンシップを振り返る【佐藤信人アイズ】
ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、ZOZOチャンピオンシップの最終日最終組で回った3選手と大会について語ってもらった。 松山英樹のドライバーショットを"フェニックス"で撮り下ろし【連続写真】
今回のZOZOチャンピオンシップの解説を担当し改めて、試合展開は微妙な事象や思いが影響し、それがまたゴルフの奥深い魅力であることを感じました。試合は最終日、最終組を回った3人の三つ巴の優勝争い。実績や知名度からいえば、世界ランク32位で迎えたジャスティン・トーマス(JT)が優勢と見るのが一般的だったでしょう。 ところがトーマスは22年の全米プロを最後に約2年半、優勝から遠ざかっています。3人のなかで最も勝ちたい思いが強く、「勝たなければならない」という思いも生まれていたかもしれない。日本でもファンの多いトーマスですから、勝たせたいというファンの熱い思いも伝わりました。もちろんそれがプラスに働くこともありますが、少しハードルを高くしてしまった気もします。 ルーキーイヤーのマックス・グレイサーマンについては、少し前にこちらで紹介しました。PGAツアーに慣れるのに少し時間がかかりましたが、7月の3Mオープン、8月のウィンダム選手権で2試合連続の2位。シードを確定させるどころか世界ランクを一気に上げ、プレーオフシリーズ第2戦のBMW選手権まで進出。しかし、優勝経験のない彼にも、初優勝に加え世界ランクを少しでも上げ、初のマスターズ出場を早く決めたいとの思いもあったでしょう。 勢いからすれば、本命のトーマス、対抗はグレイサーマンが妥当な予想。ちなみにグレイサーマンの両親はソ連時代のウクライナ出身で、亡命したアメリカで知り合い、生まれたのが彼です。そんな経歴も関係しているのか、プレー中、一切感情を顔に出しません。 最終18番で、首位に並ぶバーディパットがほんの一筋の差でカップをかすめたときも、まったく表情を変えませんでした。近い将来、初優勝するでしょうが、そのときの表情が今から楽しみです。 さて、大会前にニコ・エチャバリアの優勝を一体誰が予想したでしょうか。最終日に至っても優勝争いのメンツを見れば大穴中の大穴。大会前の世界ランクは292位。ルーキイヤーの昨年、プエルトリコで優勝しましたが、22年から出場58試合中、半数以上の35試合が予選落ち。さらにトップ10はわずかに3試合で、うち2勝が優勝。もう1試合はグレイサーマンと組んだ今年のチューリッヒでのダブルス戦です。個人戦2度のトップ10が両方とも優勝というのは勝負強いというか大変珍しい。 今回、3日目は大学のチームメイトだったテーラー・ムーアと、最終日はチューリッヒのパートナーだったグレイサーマンと同組だったこともプラスに働いたのでしょう。今年で最後となるZOZOチャンピオンシップですが、高い技術はもとより、選手のファンへのホスピタリティ、きめ細かい大会運営、徹底したコース管理など、普段目にすることのできない“ゴルフ”を多くのファンが肌で感じたはずです。 僕もプロアマでツアー2勝のデービス・ライリーとラウンド。飛距離、精度、何よりホスピタリティ溢れるナイスガイで、こういう選手がPGAにはたくさんいるんだとも感じました。来年以降も日本開催を望む声は多く、僕も声を大にしてお願いしたいです。 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年11月19日号「うの目 たかの目 さとうの目」より
週刊ゴルフダイジェスト