80年前に水没事故を起こした海底炭鉱「長生炭鉱」…183人の遺骨が眠る坑道の入り口を発見 危険な調査に挑む水中探検家が語る使命感
戦時中の1942年、宇部市にあった海底炭鉱「長生炭鉱」で起きた水没。落盤により海底に延びた坑道が水没。朝鮮半島出身者136人を含む183人が亡くなり、遺骨は今も残されたままになっている。 【写真】全貌が明らかになってきた坑道の入り口…これからさらに泥を除去するなど、潜水の準備が進められます 2024年9月に始まった掘削調査により長らく不明となっていた炭鉱の入口が発見。遺骨の回収に向けて作業が進められている。調査を行う市民団体「長生炭鉱の「水非常」を歴史に刻む会」の協力のもと、水中探検家でありテクニカルダイバーの伊左治佳孝さんにお話を聞いた。 ー調査のきっかけは? 伊左治:遺骨が中に残されたままという悲しい状況で、そのご遺族もご高齢になり、これまで名乗り出る人がいなかったという現状を踏まえると、私が実施しなければこのまま残されたままになってしまうのだろうなと思ったからです。 私が取り組みを始めることで、長生炭鉱および宇部炭田が注目を浴びれば、何かしら前に進むのではないか。私が0から1にする部分を実行することで、一番危険な箇所や安全管理が手探りの時期を終えられれば協力者も集まるかなと思っています。またこのような危険かつ安全確保の手段が分からない中での取り組みは、探検家の役割だと考えています。 ー最も危険が予想される作業は? 伊左治:潜水開始地点付近の坑道の崩落が一番危険です。木枠が空気中に露出し、また支持していたと考えられる上部の水が排出されたため、崩落のリスクが高いと考えています。また、中期的には排出したガスが坑道内に溜まり、支持構造物を酸化させたり緩ませることで崩落のリスクがあります。 一般的な作業ダイバーであれば、濁りの多い低視界や閉鎖環境(直接浮上できない環境)、また水深の深い箇所での長時間の潜水は極めてリスクが高いのですが、私はそれに対応した実経験が多いため、それほど心配はしていません。 ー最終的な目標は? 伊左治:もちろん最終的には遺骨の回収に繋がり、悲しい事故を悲しいままで終わらせないようにできればと思っています。たとえ回収ができなかったとしても、可能な限りのことを実施したというのは、ご遺族の方にも喜んでいただけるのではないでしょうか。今回の調査や遺骨回収が問題なく終了するようであれば、宇部炭田全体の遺骨の回収を実施したい気持ちはあります。 また、到達が困難なために事故の調査や遺骨回収作業ができていない場所というのは日本にも数多く残っているので、そのようなところのお手伝いや開拓ができればと思っています。 ◇ ◇ SNSでは「入口の穴が潰れそうなほど薄い」「もう少しだよ、待ってて」「どうかお気をつけて」「二次災害が起きないか心配」との反響が。現在、会は掘削・整地作業を行っており、10月29日から潜水調査が開始されるとのこと。調査の行方を見守りつつ、その成功を祈りたい。 (まいどなニュース特約・ゆきほ)
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