「御曹司に見初められてハイスペ婚」結果はどうなる?平安時代もさほど変わらない『蜻蛉日記』作者の末路
紫式部を中心に平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第15話が4月14日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。 本放送では、まひろ(吉高由里子)とさわ(野村麻純)は『蜻蛉日記』の作者・藤原寧子(財前直見)に石山寺で出会います。この場所で、御曹司と悲喜交々の結婚生活を送った彼女が若い姫たちに伝えたこととは...。
御曹司に苦労させられた美しくも知的な女性。寧子の言葉「嫡妻になられませ」に込められた思いとは?
寧子(財前直見) 大河ドラマ「光る君へ」15回(4月14日放送)より(C)NHK 誦経中、さわは「飽きた」と声を発し、まひろが彼女のそんな姿にとまどっていると、気品ある一人の女性が「しっ!」とふたりを注意します。この女性が道綱母をモデルにした寧子です。 まひろは『蜻蛉日記』を幼い頃から読んでいたこと、そして幼い頃は理解できなかった部分も成長するにつれて分かるようになったことなど、この本に対する自分の思いを作者に伝えます。 兼家様が 何日かぶりに訪れたのに門をお開けにならず「嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに 久しき ものとかは知る」(※)という切ないお歌を送られた意味なぞ…。今は 痛いほど分かりますけれど…。 まひろが上記のように話すと、寧子は「心と体は 裏腹でございますから」と応えました。 まひろは寧子との会話の中で、道長から妾になるよう言われたあの夜のことを思い出します。自分を一番だと言ってくれたこと、けれども北の方(正妻)にはできないということを。 寧子は兼家との日々を日記に綴り、公にすることで、妾の痛みを癒していたと、若いふたりに伝えます。 そして、「妾は つろうございますからできることなら 嫡妻になられませ」「高望みせず 嫡妻にしてくれる心優しき殿御を選びなされ」と、自分の経験を踏まえて助言しました。 妾は心から愛される存在であるとはいえ、正妻との扱いの差がなかったわけではありません。例えば、産んだ子供の将来の地位にも差が出ます。(兼家のもう一人の妻・時姫が娘を入内させたとき、道綱母はもどかしい思いをしたそう) そして当時、上流貴族の男性から愛されたとしても、円満な暮らしが生涯にわたり保障されるわけではありません。兼家のようにうそをついて出ていき、数日後に何事もなかったかのように戻ってくる男もいました。メールも電話もない時代ですし、女性が男性を探しに出歩くこともできませんので、女性は愛する男がどこに行ったのかも、いつ戻ってくるのかも分からず、待ち続けるしかありませんでした。 ※道綱母が詠んだ和歌。兼家は用事があると出て行き、召使が尾行すると、別の女の家に入って行ったことが発覚。2~3日後、兼家は道綱母のもとに戻ってきたが、彼女は門を開けさせず、追い返した。この出来事は道綱母と兼家が子どもを授かり間もない時期の話だという。彼女の孤独感や悲しみがこの歌に読み取れる。