再び立ち上がったなでしこの熊谷紗希、女王返り咲きへ「少しでも力になれるのであれば」
サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」の熊谷紗希(34)=ローマ=が再び立ち上がった。パリ五輪直後は今後の代表活動について明言を避けていたが、10月に「プレーを続ける限りは目指すところ」と日の丸を背負う意向を表明した。質の高いプレーはもちろん、人並み外れたメンタルの強さや豊富な経験はなでしこにとって不可欠な武器。2027年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会での女王返り咲きを目指すうえで、頼もしい存在となってくれそうだ。 ブラジルW杯開幕は36歳で迎える。大黒柱であっても、「なでしこの監督も代わる。私が選ばれる、選ばれないということもある」と慎重になるのは当然だ。しかし、主力として11年ドイツW杯制覇に貢献した歴戦のDFがなでしこと日本女子サッカーの発展を願う気持ちは強く、「少しでも力になれるのであれば代表を目指したい」と力を込める。 戦う意欲さえあれば、大きな戦力であるのはいうまでもない。10月26日に東京・国立競技場で行われた韓国戦にもフル出場し、4-0の快勝に貢献した。試合後の会見では、韓国の監督も「日本にはDFに素晴らしい選手がそろっていると思った」と感想を語り、印象に残った選手の一人として熊谷の名を挙げた。 メンタルの強さも比類ない。ドイツW杯決勝の米国戦で優勝を決めるPKをけり込んだシーンは、日本サッカー界に燦然と輝き続ける。パリ五輪1次リーグのブラジル戦では、0-1の後半追加タイムに起死回生の同点PKも決めている。外せば敗戦濃厚、前半追加タイムにエース格の田中美南(ロイヤルズ)がPKを外していた状況で、重圧をものともしない強心臓ぶりが際立った。 なでしこと所属クラブであまたのタイトルを手にしてきた。ドイツW杯で優勝し、12年ロンドン五輪と15年カナダW杯は準優勝に輝いた。フランスのリヨン在籍時に欧州チャンピオンズリーグ(CL)を5度、国内リーグを7度制覇。日本の浦和、ドイツのバイエルン・ミュンヘン、イタリアのローマでも国内リーグ優勝に貢献している。 そんな熊谷に、ドイツW杯制覇時の指揮官で、韓国戦で監督代行を務めた日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長は、「なでしこイズムを若い選手に伝えてほしい」と期待。本人も自覚十分で、「日本の良さは技術の高さや考えて走ってチームのために戦うこと。そのために徹底するべきところは伝えていきたい」と、伝道師役を喜んで担うつもりでいる。
韓国戦後には「ミスもあって精度の部分では修正点もあるが、チームとして早く相手からボールを奪うことにトライし、すぐにボールを奪えるところは出せた」と、課題とともに収穫も口にした。すでに視線は世界一奪回に向けられているようで、強烈なリーダーシップを発揮しながら再スタートを切ったチームも引っ張っていく。(奥山次郎)