「ラーメン二郎の顧問弁護士」という仕事 「儲からないフランチャイズ」「インスパイアに勝訴」成功支えた"黒子"の告白
●法的バックアップの中身
精神的な主柱(山田さん)と実務担当(幹男さん)の法的なバックアップが弁護士の役割だ。仕事は多岐にわたる。 開業における賃貸借契約のチェックもその一つだ。訴訟になることもある。 「親父さんと息子さんが視察してOKが出た店舗を私が確認します。ラーメン二郎の知名度が全国的になったこともあり、賃料を過剰に高く取ろうとしてくる場合もあります。 立ち退きの問題など訴訟になった案件もあります。話し合いによる解決を目指しますが、難しければ裁判で主張すべきことを主張していきます。その関係で負けたことはありません」 また、客とのトラブルなどをめぐり、加盟店から個別の法律相談にも応じている。 店内で動画撮影のトラブルも目立つようになり、店舗によっては警告の張り紙を出すような対応もしている。 グループでは年に1回の「店主会議」の場で、店主の面談も実施。 「店舗の数が増えていくと、1人の勝手な行動が他の店主に影響を与えていきます。そうならないように、危ない店主がいれば、ここは考え直したほうがいいよと注意を伝えます」 二郎人気にあやかりたいと商品化の要望は複数のメーカーから寄せられてきた。法務部とのやりとりは弁護士の仕事になる。 「お客様にご迷惑がかからないかという観点で考えます。我々が品質管理できないことも考えられます。メーカー側に従うだけになってしまうことも考えられます。 ラーメン二郎である。それはつまり、ボリュームがあって、脂があって、安くて美味しい。そのようなラーメンが提供できなくなるのでお断りしています」 海外進出の話も断ってきたという。
●本家の視点…インスパイアは「モノマネ」なりに敬意や遠慮があった→今は金儲けに走っている
ラーメン二郎が語られる際に、そのフォロワーである「二郎系」や「インスパイア」にも話が及ぶことがある。グループとの違いについて、ひと呼吸おいて語り始めた。 「何度も言いますが『安くてうまいラーメンを提供してお客様に喜んでいただく』。そこが大きく違います。 ラーメン二郎は人の褌で相撲を取ることはしていません。必ず1年ほど修行して、親父さんたちの背中を見て、仕事とお客さんにどう喜んでいただくかを学んでいきます。 多店舗展開して、店長さんに給料を払って、(現場を)人に任せて、自分では麺を作らずに経営だけしていくと、お客さんの声が聞こえてきません。 それはラーメン二郎が望んでいる営業スタイルではないので、インスパイアのお店とは違うと思います」 取材前日、三田本店の厨房に立って客と笑い合う山田さんの姿が思い起こされた。 山田さんたちからは、昨今のインスパイア系が金儲けに走っているように見えているようだ。 「かつてのインスパイアは、ラーメン二郎があって自分たちがあるという感謝や、お客さんへの気持ちもマネしなければいけないという尊敬がありました。今は、他人の褌でどうしたら儲かるか、です。ひどい人になると、本当は修行してないのに、三田の本店で修行しているとお客さんに話している店まであります。 以前のインスパイア店はモノマネしているくせに、胸を張ってインスパイアだと言っている人はいませんでした。 『モノマネの店ができて困っている』と加盟店から相談されて見に行くと、加盟店の営業が終わるのを待って遠慮するように営業を始めるインスパイア店もありました。 それがよいと言いたいわけではありませんが、インスパイア側には遠慮もあったし、ラーメン二郎に対する尊敬もあったのです。今は口先だけで、似たようなものを作って、お客さんから高額なお金を取って、実際のところはお客さんが喜んでいるかわかりません。 何回も言いますが『安く上手いラーメンをお客さんに提供する』という基本的なところを誤っている方が多いのかなと思います」