「ラーメン二郎の顧問弁護士」という仕事 「儲からないフランチャイズ」「インスパイアに勝訴」成功支えた"黒子"の告白
●インスパイア店に起こした過去の訴訟「また糸がぷつんと切れたら訴訟も辞さず」
話は「山田さんの哲学」に及んだ。 「食材は本部一括購入のほうが安いと言われますが、お客さんに喜んでもらえるラーメンを作るために、野菜や豚は地元の業者さんを使ってくださいと各店主にお願いしています。 その土地の出店によって、地元業者さんの売上が上がり、一緒に仕事できて良かったとなれば、味方をしてくれます。店舗に材料を入れてくれると、決まったところに置いてくれるし、肉なら必ず冷蔵庫に入れてくれるんです。店主がいい加減なやつだと、業者さんは肉を冷蔵庫に入れてくれないことがあります。 我が振りを考えるときに、業者さんの対応を見れば自分のこともわかるだろうというのが、親父さんの哲学です」 2000年代後半ころには、取り組みのひどさが目に余るインスパイア店に対して、不正競争防止法に違反しているとして、民事訴訟を起こしたこともあった。 「不正競争防止法の裁判も勝訴的和解になっています。その店には営業をやめてもらいました。今は他の名前で続けているんじゃないかと思います」 「親父さんも最初は『インスパイアも頑張ってるからいいでしょ』と言っていましたが、しかし、最近はちょっと酷すぎます。ラーメン二郎系とかインスパイアとか、『二郎をリスペクトしています』という言葉だけで、お客さんはおいといて、客が来るからやっちゃうというのは道義的にどうなのか。 どこかでぷつんと糸が切れたら、訴訟等の対応になってくるのかなと思います。過去の裁判の結果なども使って、どうにかできないかと考えているところです」
●次代へバトンタッチ「儲からないフランチャイズ」がグループ長寿化に役立つ
81歳の今でも「俺はアルバイトだ」と冗談めかしながら厨房に立ち続ける山田さんは、二郎の象徴的存在だ。 いつまでも現役のように思えるが、金子弁護士は冷静に行く末に目線を向ける。 圧倒的な存在感を発揮した創業者の引退によって、飲食業界では店舗やグループが分裂・崩壊することがある。 「飲食業界に広げるまでもなく、ラーメン業界の有名な店でも、内部分裂しているところがあるので、そうならないようにしなければと考えています」 創業者の引退による内部分裂の大きな原因は「一言で言うと、金儲け」と指摘する。 長い目で見れば、儲からないフランチャイズが要になってくるのではないか。 「親父さんの思想、それを継いだ息子さんの思想を各店主が理解した上で商売することで、世間並み、世間並み以上の生活ができることに感謝していれば、分裂は起きないと思う。もうちょっと店舗を増やそうとすればいろいろなことを誤っちゃうのかなと思います。そこは法的に目を光らせながら対応していく」 加盟店でも、世代交代の際にはやはり三田本店での「修行」が求められる。 こうした内容はフランチャイズ契約の規定には入っていないが、グループ内の認識は統一されていると話す。 「親父さんから息子さんへうまくバトンタッチできたのかなと思います。加盟店の目黒店をはじめ、先輩方がそれを支えています。いいスクラムが組めているのかと思います」