GDPは減速する可能性高い 街角景気にみる日本経済の風向き
街角景気とも呼ばれる「景気ウォッチャー調査」。商売に従事する人々らの景況感は冷え込んでいるようです。この指標からGDP(国内総生産)成長率や株価の先行きを考えます。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストによる解説です。 【グラフ】消費者マインド悪化 消費増税なら景気は落ち込むのか?
人々が肌で感じる景況感は冷え込む
内閣府が10日に発表した5月の景気ウォッチャー調査は、景気の現状判断DIが44.1へと前月から1.2ポイント下がり、景気の先行き判断DIも45.6へと2.8ポイント悪化しました(いずれも季節調整値)。現状判断と先行き判断は、双方とも2016年6月以来の低水準に到達し、人々が肌で感じる景況感が冷え込んでいることを浮き彫りにしました。米国の通商交渉の不透明感に加え、消費増税への懸念が強く効いているのでしょう。 この指標は、内閣府が2000年から公表しているアンケート形式の経済指標で、調査対象者(以下、ウォッチャー)は商店街代表者やスーパー、コンビニ、百貨店、飲食店、ホテルなどの経営者・従業員のほか、タクシードライバーら消費者と密接な立場でビジネスをする人が中心です。その他にも製造業企業、職業安定所の職員など景気動向に敏感な業種に従事する人が含まれています。 全国に約2000人いるウォッチャーは景気の現状と先行きについて、「良い」「やや良い」「どちらでもない」「やや悪い」「悪い」の5択で回答します。調査期間は毎月25日から月末までで、公表は翌月の10日前後という速報性に優れた指標です。公表が始まった当初は「タクシードライバーに景気を聞いて何が分かる」と揶揄されたとも聞ききますが、今やこの指標はGDP(正確にはGDP成長率から在庫投資寄与度を控除した「最終需要」という項目)や株価に一定の連動性を有する優れた貴重な経済指標として認識されています。
GDP成長率は前期の反動が出る可能性
4、5月の景気ウォッチャー調査を見る限り、4~6月期以降のGDPは減速する可能性が高いでしょう。2019年1~3月期のGDP成長率は前期比年率+2.2%という高成長を記録しましたが、これは輸入減少、在庫増加という一時的要因によって数字がお化粧されていましたから、翌期以降にその反動が色濃く出ると考えられるからです。足もとの景気ウォッチャーは4~6月期のGDPがマイナス成長になる可能性すら示唆しており、日本経済の風向きの悪さを物語っています。