【毎日書評】抗うとは?マスコミに人生を狂わされても「僕は親が好きなので」といえる強さの秘密
5/24(金)の毎日書評で、僕の新刊『抗う練習』(印南敦史 著、フォレスト出版)の前半をご紹介しました。改めて簡単にご説明すると、本書で勧めているのは「生きづらい時代だからこそ“どうせ無理だ”とあきらめる」のではなく、「なにか、できることはないか」と考え、行動してみようということ。すなわち、それを「抗う」ということばに置き換えているわけです。 対する後半は僕が考える「抗っている人」との対談で、その相手は1998年に起きた「和歌山カレー事件」の被告人として死刑が確定している眞須美さんの長男(以下、林くん)。担当編集者と「誰かと対談したいよね」という話になったとき、すぐ頭に浮かんだのが彼だったのです。 この事件については冤罪の可能性が非常に高いことが指摘されていますが、とはいえ、いろいろな意味でセンセーショナルだったことも事実。 そのため、事件後に児童養護施設での生活を強いられた林くんも、施設内での虐待、社会に出てからの差別など、理不尽な体験を余儀なくされます。 以前ほど過激ではなくなったとはいえ、36歳になった現在もいわれのない誹謗中傷などを受けているようです。 林くんとの間接的なつきあいが始まったのは2019年のこと。彼の著作『もう逃げない。 いままで黙っていた「家族」のこと』(ビジネス社)について書いた僕の書評に、林くんと出版社の方が気づいてくれたことがきっかけでした(初めて世に出た書評だったそうです)。 以後、Twitter (現・X)でやりとりをするようになっていたのですが、そんななかで上記のような話になり、彼が暮らす和歌山まで足を運んで対談をしたのです。初めて会ったのは2023年9月24日で、2度目が2024年の1月31日。1月のときには林くんがひとりで暮らすアパートまで押しかけ、音楽を聴きながら酒を飲み、遅くまで語り合ったのでした。 あとから確認してみたら、対談は4時間58分にまで及んでいました。 つまり本書の後半には、そのときの話が収録されているのです。きょうはそのなかから、いくつかのやりとりをご紹介したいと思います。