育児漫画でママやパパに笑顔を 子育てに感じた課題
【&w連載】30歳からのコンパス
様々な分野で活躍している方々は、どのような30歳を過ごし、その後どのような選択をしてきたのでしょうか。「30歳からのコンパス」では、企業で働く人たちにもライフストーリーをうかがいます。 【画像】「Nicomic」に掲載されている育児漫画の例(7枚)
「初めての子連れランチで……」「スマホを使いたいとしつこくせがむ子供に怒鳴ってしまい……」「娘の乳歯がいよいよグラグラし……」などなど。子育てをテーマにしたそんなノンフィクション漫画が並ぶのは、7月末にローンチしたサイト「Nicomic(ニコミック)」だ。 それぞれの漫画の原作は、全国の子育て中のパパやママから寄せられた日常の1コマ。日々のできごとを投稿すると、有料(期間限定キャンペーン中は1800円)でプロの漫画家がオリジナルの漫画にしてくれる。 もうひとつこのサービスには、無料の会員登録で誰でも投稿漫画の読者になれるというお楽しみも。笑ったり、ほろりとしたり、思わずエールを送ったり。夢中になってつぎつぎ読むうち、今のこの瞬間もきっと全国の家庭で繰り広げられているだろうシナリオのない子育て劇場の尊さが、じんわりと胸に迫ってくる。
1日の終わりの1分間だけでいい
多くの人が変化の時を迎える20代と30代の狭間(はざま)でこのサービスを立ち上げたのは、株式会社SANTAMの代表取締役で、日用品メーカーの社員でもある原田利沙子さんだ。29歳で第1子を、30歳で第2子を出産したときの合計2~3年の産休、育休期間の原体験がきっかけになって、社内のビジネスコンテストに子育て世帯向けのサービスを応募したのが、このサービスの始まりとなった。 大学院を経て入社した会社では、東京にある研究所で洗剤などの香りの研究を担当していた。ところが第1子を出産して育休に入った2週間後に、夫が地方に転勤に。原田さんも同行することになり、知り合いも少ない土地で孤独な子育てが始まったという。 「夫も転勤したばかりで仕事が忙しかった。そのため、ほぼ一日中0歳児と2人きりで過ごす毎日。気がつけばしんどさが募って、自分の笑顔も減っていきました。子育てにはいまなお大量の課題があるという状況を、身をもって知ったんです。1日の終わりの1分間だけでいい。パパやママが笑顔になれる時間を子育て中の家族に届ける方法はないか。子育てに困っている人の力になれる方法はないか。そんな思いが日に日に大きくなっていきました」 最初に試みたのは、育休中に1人で始めたクラウドファンディングだった。実行したのは、「シングルマザーにオリジナルのベビードレスを届けるプロジェクト」。行動を起こしたことで多くの人との出会いが生まれ、子育てにまつわるさまざまな課題が原田さんの元に届くようになった。 子育てに悩んだすえに自ら命を落としたり、0歳児に虐待してしまったり。そんなニュースに心を痛めるたび、実際に聞いたみんなの子育ての悩みとオーバーラップした。「涙がこぼれそうになった」ことも一度や二度ではなかったという。 そうしてますます大きくなっていった「困っている人たちの力になりたい」という思いを抱えたまま、22年には育休を終えて会社に復帰。そこから会社員の立場で何かできることがないかと模索を続け、昨年、社内のビジネスコンテストへの応募を決意した。 「課題は何かということをいろいろ考えていたとき、あることにいきついたんです。親にとって子供のことは何より一番で、自分への矢印が向きにくいという人がほとんどです。その矢印をどうすれば親のほうに向けられるか。それも、子供が一番という気持ちをきっかけにして、親の方に矢印を向けることができればと考えました」