センバツ高校野球 関東一 一丸となりベストを 温かい料理で選手支え27年、原康浩さん /東京
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する関東一。その部員たちが暮らす寮に「店長」と呼ばれる人物がいる。調理師の原康浩さん(62)は長年、温かい料理で選手たちを支えてきた。大会が近付き、原さんは「いつも練習でやっていることを100%出せれば、結果はついてくる。一丸となってベストを尽くしてほしい」と選手の活躍を楽しみにする。【小林遥】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 2月下旬の午後、千葉県白井市にある野球部員が暮らす寮の調理場では、原さんが夕食の準備に取りかかっていた。「今の寒い時期は鍋が人気で、今日は豚キムチ鍋です」。カセットコンロをテーブルに置き、熱々のまま食べられるように工夫している。 原さんは27年間、同校野球部の調理師として働いている。食事は朝専門のスタッフなど計8人で担当し、原さんは平日に夕食、休日には昼食も作る。部員51人分の食事を作るために昼は米14キロ、夜は20~21キロを炊き、事務処理を含めて仕事が終わるのは午後10時くらい。大変な仕事だが、原さんは笑顔を欠かさない。 「自分からふざける」というのは原さん流のコミュニケーション方法だ。今話題の芸能人の話などをしたり、冗談を言い合ったりして選手の目線になることを心がけているという。熊谷俊乃介捕手(2年)も店長について「明るくて面白い」と話す。しかし、礼儀やマナーには厳しく、食べ物を粗末にしたり野球道具を雑に扱ったりする部員には厳しい言葉がとぶ。 それ以外では優しく、練習でうまくいかなかったり、けがで落ち込んでいたりする選手を見つけると、「元気出せ」「焦るなよ」などと声をかけることもある。部員からは「店長」と気さくに呼ばれ、ふざけ合える仲だ。 同校野球部に栄養士はおらず、原さんが献立を決めるため、選手が希望したメニューにすることもある。冬は鍋、夏の暑い時期は麺類が人気といい、冷やしそばやジャージャー麺などを作る。また、誕生日を迎える部員は紙に記入すれば、フルーツパフェやハンバーガーなど食べたいものを作ってもらえる。 1年生の時は焼き肉丼と海鮮丼、2年生の時はつけ麺を注文した坂井遼(はる)投手(2年)は「自分たちにとっての甲子園初勝利を挙げて、店長を喜ばせたい」と話し、熊谷捕手も「店長のご飯を食べてここまで大きくなったんだということを、大会で見てもらいたい」と意気込む。 関東一の試合日は仕事が休み。原さんは「家で、応援というか文句言いながら見ますよ」と笑う。 〔多摩版〕