誕生100周年「ペンドルトン」のウールシャツが愛され続ける理由
「弊社のウールシャツは他と一線を画すユニークな存在」
―― 現在でもコットン製に比べ、ウール製のシャツは珍しいですが、ペンドルトンはウールシャツをどう定義付けたのでしょうか? ジョン 簡単にいうと、耐久性や保温性、手入れのしやすさなど、ウールが備える高い機能性をファッションアイテムへ落とし込んだものが弊社のウールシャツです。デザイン面においても、ウールは染めやすく多彩な色を表現できるのも特徴であり、カラフルな合成繊維の製品が溢れている現在でも、けっして見劣りすることはありません。とにかく他とは一線を画す、ユニークな存在だと思っています。 ―― ヴィンテージショップに陳列されているペンドルトンのウールシャツを見るにつけ、どんな時代も変わらないクオリティを維持してきたことが分かりますが、逆に変えてきたことはありますか? ジョン ウールシャツの製法は100年間ほとんど変わっていませんが、技術は着実に進化してきました。例えばスワッチ(生地見本の小片)ひとつをつくるにしても、かつてはすべてが手づくりでしたが、現在はコンピュータで簡単につくれ、配色のシミュレーションなども行えます。ウールを染める染料なども進化しており、より美しく染まるようになっただけでなく、環境にも優しくなりました。ウール生地の生産に関しても、原毛から紡績、染め、織りといった工程は変わりませんが、それぞれに用いる機械は最新のものを導入しているのです。 ボブ そうした新しい機器や最新技術により、生産効率が高まっただけでなく、ひと昔前に比べたら環境への負荷が格段に少なくなっています。とくに製造工程で不可欠な水や電力の消費量も、1970年代とは隔世の感があるほど減っており、サステナブルな面も向上したといえるのではないでしょうか。
時代毎のベストが生んだロングセラー
アウトドアでの活動にもへこたれないクオリティを備え、多少の雨なら弾き返してくれる。そして薄手で軽量ながらも抜群に暖かく、柔軟で動きやすい。しかも鮮やかな色柄とベーシックなデザインは、着る人の性別や年齢を選ばず、あらゆるスタイルに溶け込む。どんなに時代が変わろうとも、こうした高い機能と普遍的なデザインを実直に追求し続けてきたからこそ、ペンドルトンのウールシャツは100年もの長きにわたり、世界中の人々に愛されてきたのだ。 だが、それは時代の変化に無縁というわけではないことは、ふたりの言葉からも明らかである。クオリティや生産性を高めるべく、最新設備を積極的に導入し、むしろ時代の変化を敏感に捉えてきたからこそ、ファッションという移ろいやすい分野にありながらも、次の100年に備えた持続可能性をも携えた、超ロングセラーアイテムを生み出せたに違いない。
TEXT=竹石安宏 EDIT=大内康行