「老人ホームでわいわい暮らしたい」56歳独身・松村邦洋が考える老後の人間関係 #老いる社会
「上半身で人と接していきたい」56歳独身が考える、人付き合いのあり方
――現在独身ですが、一人で暮らすことに対してどう思っていますか。 松村邦洋: もう56歳ですからね。もっと早く結婚を考えればよかったですし、もしいい出会いがあればそれも大事だなとは思いますけどね。ただ、年をとると、あとはもう学校の延長みたいな感じで、人と出会って楽しく過ごしていくという風に切り替えていこうかなと思ってもいます。 モテる人には女性が寄ってきますけど、モテないというのは鎧をつけているようなもの。やっぱりモテたいならこの太ってる体型も含め鎧を少しずつ外していくのも大事でしょうね。ただ、モテる人は、女性があまりにも寄ってきすぎてなかなか大変でしょう。だから、よく水道橋博士が「まっちゃん、よかったな、モテなくて」と言ってました。最初は笑ってたけど、時間をおいたら腹立ってきましたけどね(笑)。 下半身の部分、つまり欲望の部分が強くなったら、ちょっと大変なことにもなるなとも思うんです。だから、これからは、上半身で人と接していきたいですね。 ――友達付き合いも大事にされているのでしょうか。 松村邦洋: 友達は大事ですよね。芸能界も“友達の輪”と言いつつ友人関係を築くのはなかなか難しいですが、何でも言い合える友達がいたらいいと思います。芸能人同士だとどうしてもライバルのようになってしまう。仕事の人間関係で体調が悪くなって、鬱(うつ)になったりする人もいるでしょうけど、芸能人に限らず、楽しく人と人をつないでいくのがいいですよね。多少嫌なことを言われても、笑顔でうまくいくような関係かな。 僕は怒られるのがダメなんです。喜怒哀楽という言葉があるけど、昔は「怒怒怒怒」でずっと怒られっぱなし。でも今は「喜哀楽」で、怒られるということがアウトになった。喜怒哀楽の「怒」は、たぶんいずれ消える時代になると思いますね。だから、自分も怒らないことが大事ですよね。
「寿命の寿はお祝い」松村邦洋が“老いてこそ花”と考える理由
――松村さんは“老い”を感じるときはありますか。 松村邦洋: 物覚えが悪くなりましたね。昔は、TBSドラマを見ながらその場で覚えて、もう次の日にはセリフを言えてましたから。ドラマ「スクール・ウォーズ」をパパッと見るだけで、そのときのナレーションのものまねができてましたからね。 でも、今はもうかなり衰退しています。喉も老化してくるのではないかなと思うので、だんだん声の張りが弱くなったりするんじゃないかな。若いときは直球ばかりだったんですけど、今はもう変化球主体の芸ですね。「ここはカーブかな」と考えてみたり、カットボール、スライダーを多く入れたり、いい意味で人の顔色も見ながらシュートが投げれるようになったりするといいですよね。 僕は、若い頃は幹がなかったように思います。幹を大事にすると、今度は枝がなかったりね。自分という幹もちゃんと持ちながら、そこに枝を作っていければいいんですけど。枝が多くて幹が弱いと、台風のときに木が折れちゃうんじゃないかと思うから、切れる範囲の枝は切っていこうかなと。そうやって幹をしっかり作れればいいかなと思います。 ――老後について考えることはありますか。 松村邦洋:僕は“老いてこそ花”だと思っているんです。年を取ったら、老人ホームでみんなでわいわい楽しくやりたい。年を重ねながら、ああだこうだと昔の話をする暮らしというのも、幸せなものになるような気もします。 若いときはイライラして怒ることもありますけど、老いたらいい具合に落ち着いて、肩の力も取れて、普通に話もできたりします。だから、老いてこそ本当の花になるような気がするんです。60代、70代、80代、90代は、もう幸せ。年を取ったらみんなでラジオ体操なんかをやり始めるのもいいかも。山登りでもいいし、歴史巡りもいいし、いろんなお寺を巡ってもいいですしね。 ――これから先、松村さんはどのように生きていきたいですか。 松村邦洋: やっぱりまず命が大事ですよね。ドラマの『101回目のプロポーズ』じゃないですけど、「僕は死にましぇん」ってことですよね。長く生きながら健康であるってことですかね。 あと、みんなで楽しく生きたいです。健康で長生きがいちばんいいと思います。長く、丁寧に生きたいと言いつつ、自分の体に説得力がないんですけどね(笑)。しがらみとかいろんなことに悩むよりは、楽しくやるのがいい。みんないずれ必ず寿命を迎えますから。ちなみに「寿命」の「寿」はお祝いという意味でもあります。だからこそ「お祝いが来るまで頑張りましょう」と思いたいですね。 === 松村邦洋 1967年、山口県生まれ。タレント。高校時代からものまねを始め、88年にフジテレビ『発表!日本ものまね大賞』で敢闘賞を受賞。ビートたけしさんや西田敏行さんのものまねで人気を博す。2009年、東京マラソンに出場した際に心房細動で倒れ、意識不明となるが、その後回復。その経験をもとに各地で健康に関する講演も積極的に行っている。 文:遠藤光太 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました) 「#老いる社会」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。2025年、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となります。また、さまざまなインフラが老朽化し、仕組みが制度疲労を起こすなど、日本社会全体が「老い」に向かっています。生じる課題にどう立ち向かえばよいのか、解説や事例を通じ、ユーザーとともに考えます。