ピッキング成功率94.5%…物流現場自動化へ、東芝が物流ロボットにAI新技術
東芝は物流現場の自動化を促進するため、ロボットハンドによる荷物のピッキングを94・5%という高い成功確率で可能にする人工知能(AI)技術を開発した。複数の吸着パッドを持っており、つかむ荷物によってパッドの種類や数を高速で適切に変え、確実に荷物をつかむようにした。物流倉庫などでの実証を進め、2026年度以降に開発技術を搭載した製品の実用化を目指していく。(編集委員・小川淳) 【写真】ピッキングロボットの実用化イメージ 物流倉庫の作業に使うピッキングロボットでは、吸着パッドが一つだけでは多種多様なモノをつかむことが難しかった。一方で、モノの形状や大きさに合わせて複数の吸着パッドを使い分けるには、計算量が増えて時間がかかったり、精度も不十分だったりする課題があった。 東芝生産技術センターの大賀淳一郎フェローは「ロボットハンドの向きと吸着パッドの位置を正確に計算する必要がある。1個のパッドに比べて出力するパラメーターが多くなる」と指摘する。 東芝が新しく開発したAI技術では、モノをつかむ位置と、つかみ方(使用するパッドの数)との2段階に分けて学習するのが特徴となる。最初に、色と奥行きが捉えられるカメラによって対象となるモノを撮影し、特徴点を抽出して、ハンドがモノに接触できる面を検出する。 次に1段目のモデルから出力した情報(特徴マップ)を基に、ハンドの向きと吸着する位置を決定する2段目のモデルを計算する。1段目の特徴マップを2段目のモデルに使用することで「本来必要だった計算の一部が省略された形になり、これによって高速化を実現している」(大賀フェロー)。 さらにこのAI技術を用い、計算機で検証したところ、「段ボールの箱」「洗剤ボトル」「アクリル製の筒」「スプレー」という大きさも形も違う4種類のモノを四つの吸着パッドでつかむのに必要な時間は、0・47秒と従来手法の10分の1にまで短縮することに成功した。成功率は80・1%と6・2ポイント向上した。 大賀フェローによると「アームが動いている間に計算が終わる感じのため、見たらすぐ取りに行く」イメージだという。また、このAI技術を搭載した実機のロボットによる検証では、モノをつかむ平均成功率が94・5%と実用化レベルであることを確認できた。 拡大を続ける電子商取引(EC)市場を受け、倉庫など物流の現場ではさまざまな形状や大きさの異なる雑多な荷物のピッキングが必要になる。開発したAI技術を用いたロボットによる作業が実現すれば、人手不足の解消や作業の効率化などに貢献できる。 大賀フェローはロボット単体だけではなく「さまざまなシステムとうまく連携させて、最終的には成功率を100%に近いところまで持っていきたい」と期待を述べている。