多様性を気にしている時点で多様性じゃない──「地球人」ウルフ・アロンという生き方
ウルフ・アロンの知名度は抜群に上がった。こうした活動に好意的な意見がある一方で、誹謗中傷も受けた。昨今、多くの著名人が悩まされる問題ではあるが、彼は信念を貫く。 「批判的な意見や誹謗中傷もありましたが、そうした意見を気にしてたら行動はできない。否定的な人は何かしら、あら探しをして突いてくる。だからこそ自分が正しいと思ったことに自信を持って行動することが、一人の柔道選手として大事だと思います。批判的な意見を気にするよりも、肯定的な意見の人たちを集めて、そこにありがたみを感じながら活動したいです」
これからも「ウルフ・アロン」として生きていく
パリ五輪まで1年を切った。4月からはバルセロナ五輪男子78キロ級金メダルの吉田秀彦氏が総監督を務める「パーク24」に移籍。メディア露出は控えて、五輪代表をつかみ取る思いでいる。 「現役の選手が、メディア出演の活動をしたことに意味があると思ってます。これからしっかりと結果を残していくことで、僕の活動自体に意味を見いだすことができる。まだ27歳ですし、もう一回戦いたい気持ちもありました。2位でも3位でもいいやって生活するのって、やっぱり違うと思う。やるなら1番を目指していくのが僕の生き方です。自分自身がやってきたことが正しいと思えるためにも、もう一回、五輪で優勝したいです」 一方で、現役を続けられるのはそう長くはないことも自覚しているが、仮に引退する日が来たとしても、その後の「ウルフ・アロン」という生き方は変わることはないだろう。 「どこにいても自分らしく生きていきたい。今は柔道をやっているけれど、引退してやりたいと思ったことがあったら、それをやるだけです。格闘家への転身ですか? 格闘技は無理です(笑)。オファーもありません。だって柔道選手が負けると、柔道は弱いってなっちゃうのは嫌です。絶対にやらないと思います」 それでもこの先の人生、何が起こるか、どう転ぶかはわからない。誰が何と言おうと「やりたいことをやるだけ」──。“地球人”ウルフ・アロンとはそういう男だ。
ウルフ・アロン 1996年2月25日生まれ。東京都葛飾区出身。アメリカ人の父と、日本人の母の間に生まれた。6歳から柔道を始める。2017年の世界選手権で優勝。2019年には体重無差別で柔道日本一を決める全日本選手権で優勝。2021年の東京五輪では金メダルを獲得した。史上8人目の「柔道3冠」を達成。2023年4月、パーク24に移籍。パリ五輪での連覇を目指している。