ドラフト裏話…六大学の名門・早大の主将と副将「分かれた明暗」なぜ“大学日本代表のキャプテン”が指名漏れに? 監督が語っていた「ある懸念」
今年も様々なドラマを生んだプロ野球のドラフト会議。1位指名選手の笑顔が華やかに報じられる一方で、厳しい“指名漏れ”の現実に直面する選手もいる。東京六大学の名門・早稲田大から、そんな明暗が分かれた2選手の「テレビに映らない」現場をレポートする。《全2回の1回目/つづきを読む》 印出太一と吉納翼。 ともに22歳になる早稲田大の今年度の主将と副将はともに愛知県で育った。中京大中京出身の印出主将と東邦出身の吉納副主将だ。 早大はこの春、7シーズンぶりに六大学野球リーグ戦で優勝を飾った。印出は捕手として、吉納は外野手として、愛知の2人が先頭に立ってチームを引っ張ったと言っていい。 試合の最初と最後の挨拶で、印出が先頭(審判側)に、吉納を最後尾(スコアボード側)にして整列する。 「今年は2人でみんなを挟む形で並んでいます」と印出がいう。「印出・吉納丸」という船のイメージだろうか。奇しくも寮の部屋も隣同士だ。 春シーズン、優勝を決めたゲームの直後に2人が歩み寄った。 「ようやくだな」 頬を緩めた瞬間だった。
名門の主将と副将…ドラフトで分かれた明暗
そんな2人はともにプロ志望届を出して、プロ入りを目指していた。だが、10月24日に行われた運命のドラフト会議では、明暗が分かれることになった。 吉納は楽天から5位指名を受け、印出は指名されなかったのだ。 早大では指名漏れになった選手は当日会見を行わない。印出がその瞬間、どんな表情で結果を受け止め、どんな心境だったのかを知る由はない。 なぜ、印出は指名を見送られたのだろうか? 小宮山悟監督が、ドラフト前に印出の課題を語っていたことを思いだす。 「肩の強さ、セカンドへのスローイングなどドラフトで指名される可能性のある選手としてはちょっと心もとない。今から練習して強肩になれるわけではないからねぇ」 早大でレギュラーに定着した2年時は、走られるとあっさり盗塁を許すことがあった。本人にもドラフト前の取材で率直にそのことを聞くと、「盗塁阻止率は学年ごとに上がっています。最近は盗塁企図数も減っていると思います」と強気の返答だった。そこには捕手として六大学の第一線で戦ってきたプライドが垣間見えた。 一方で、印出のアピールポイントはバッティングである。 六大学通算打率3割1分1厘、5本塁打、49打点(10月28日現在)。規定打席到達レベルの4年生で打率3割を超えているのはドラフトで5球団が競合した明大・宗山塁と印出だけだ。 球界全体を見渡しても「4番・キャッチャー」はそうそういない。しかし、キャッチャーは「守りだけしっかりしていれば十分」という考え方もある。打てるキャッチャーというのは、究極の存在だからだ。 そこの評価の差が、今回のドラフトでは噛み合わなかったのかもしれない。 印出は名古屋市天白区、吉納は春日井市出身。中学時代にともにボーイズリーグに所属していたことで、お互いに存在を知ることになる。それぞれ高校野球の名門ライバル校に進んで、甲子園を目指した。高校時代の公式戦は、印出が2勝1敗で勝ち越したという。 高校2年の秋には、同じチームでプレーする機会があった。 印出の通う中京大中京が明治神宮大会で優勝したことで、愛知県の高野連がそれを記念して愛知県選抜を編成し、台湾遠征をおこなったのだ。そのチームに吉納も選ばれた。打力もある捕手で、チームの要でもある印出を意識するきっかけになったという。 そんな2人が雌雄を決するはずだった3年生の大会は、コロナ禍のためになくなってしまう。そして、大学は2人ともそれぞれの縁があって早大に進むことになった。
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