「劇場版モノノ怪 唐傘」北川役は花澤香菜しかあり得ない、監督・中村健治が称賛
全国で公開中の「劇場版モノノ怪 唐傘」より、物語の核となる北川を演じた花澤香菜と、監督・中村健治の対談が実現した。 【写真】花澤香菜、感情が入れ替わる演技を褒められて「爆ぜそう」 テレビアニメ「モノノ怪」の劇場版となる本作では、男子禁制の“女の園”である官僚機構・大奥での物語が紡がれる。全3章で構成されることが明らかになっており、「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」は2025年3月14日に公開。神谷浩史が主人公の薬売りに声を当てた。 花澤は重要な役どころだっただけに、映画公開前のインタビューは一切なかったという。中村から事前にレクチャーを受けたそうで、「アフレコ前に物語のテーマやキャラクターの詳細情報が書かれたPDFをいただきました。そこには台本を読んだだけではわからない北川さんの背景やキャラクター性が補完されていて、演じるうえでの指針になりました。ここまで情報が詳細に記された大ボリュームのPDFは初めてで、この作品に対する中村監督の熱量を感じました」と語る。中村は「花澤さんを含めて、皆さん、演じる以外の事前準備がすごかったですね」と続けた。 また花澤は「北川さんが手を放した途端に、同期の女中の顔がグルグルに変わる場面は見ていて心にグサッと刺さりました。同じ組織に属していたのに、捨てた途端に自分とは無関係の人になってしまうのかと……。その冷酷さは怖いです」と述べ、中村は「この物語の大奥とは、地球、国、社会、学校、家族。それら集団すべてを暗喩しています。大奥ということで女性特有の物語は当然入れてはありますが、普遍的な人間ドラマを展開させたつもりです。女中の多くに顔がないのも『個を失くしたモブ』と『組織に染まる』という2つの意味があります」と、「大奥」に込めた思いを明かした。 北川役に花澤を起用した意図について、中村は「オーディションでの長ゼリフを聞いた瞬間に、北川役は花澤さんでしかあり得ないと思って即決しました」と言う。その理由は「1つのセリフにさまざまな感情を込めることができるところ」だと明かし、「この物語にはさまざまなキャラクターが出てきますが、北川はある意味で作品を形作る入れ物のような大きな存在です。物語の根底に北川がいて、ブルブルと作品を揺すっている。花澤さんはそんな北川というキャラクターの心の揺れ動きを声と連動させて、しかもすごく複雑に表現してくれた。僕自身、想像していた以上の北川の感情を教えてもらうことがありました」と称賛の言葉を送った。 花澤は「そのように言っていただけて光栄です!」と喜ぶ。そして「演じるうえで意識したのは北川さんの孤独です。北川さんはがんばり屋さんで自分を犠牲にしながら、なりふり構わずにキャリアアップを目指してきました。しかしあるときに、その糸がプツリと切れてしまって気力を失ってしまった。大奥には大勢の女中がいるのにもかかわらず誰にも相談できず、どんどん孤独を深めてしまった。私自身、このままいくと心が乾いてしまうかもしれないという感覚になったことがあるので、北川さんの悲しい孤独に対して心を寄せることは難しいことではありませんでした」とアフレコを振り返る。 本作の見どころについて、中村は「人間の心に浸食してくる闇とは何だろうか?と深掘りしていくと、周囲との間に生まれる絶対的に埋められない矛盾が見えてくる。そんな闇や矛盾が広がっていく中で生まれたモノノ怪・唐傘を薬売りが斬っていく物語です。作品を通して観客の皆さんが自分の心と会話をしてもらえたらうれしいです」、花澤は「この映画が、自分の大事なものを確かめる時間、自分の心を確かめる時間になってもらえたらうれしいです。カラフルな映像美にも圧倒されますし、セリフ以外のアイテムにも深い意味が込められています。あの北川さんの人形の意味とは?などさまざまに考察して隅々まで堪能して楽しんでほしいです」と述懐した。 (c)ツインエンジン