考察『光る君へ』42話「この川でふたり流されてみません?」今度こそ一緒に逝く、でもあなたが生きるなら共に生きる…まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の「川辺の誓い」
実資が現れた!
立后をめぐり帝と左大臣の対立が鮮明になりつつあり、道長と四納言たちは対策を練る。 斉信(金田哲)「このままでは帝のなさりたい放題だな」 三条帝が好き勝手にしているような口ぶりだが、これまで藤原兼家(段田安則)、道隆(井浦新)、道長がやりたい放題だったのを見てきているので、長年連れ添った妻を皇后にしたいという帝の主張が「なさりたい放題」と言われるのは、なんだかなあ。斉信は道長側に立って言っているのだから当然だが。 そこに、四納言における、えげつない立案と根回し担当・俊賢が 「ならば、娍子様立后の儀に姸子様中宮参入をぶつけてはいかがでしょう」 それを聞いて顔色を変える行成(渡辺大知)、公卿らの立場を鮮明にすることができると頷く公任(町田啓太)、えげつないとわかっていながら、その案に乗る道長。こんなときに飲み干す酒は、きっと苦く灼けるような味がするだろう。 その日程を聞いた三条帝は、ならば時間をずらす。昼に娍子の皇后立后の儀を行い、夜は姸子の中宮参入。それならばどちらにも公卿たちは参列できるはずと提案した。 このときも帝が悪の組織のリーダーのような堂々たる笑みと声で言うので視聴者側が誤解しそうだが、公卿たちの混乱を避けるため、また皇后の儀式の参列者が減らないよう、ただ気配りをしているだけである。 同じセリフで木村達成が苦悩している風に演じたら、加えてBGMを変更したら、帝が道長ら悪役にいたぶられる可哀そうな存在に見えるはずだ。これがドラマ演出の面白いところである。 だが三条帝の気配り対策にも関わらず、立后の儀式にはほとんどの公卿が欠席……正装した娍子の前には誰もいない。そこに現れた、大納言・実資(秋山竜次)! この事態を全く知らなかったらしい。根回しを頼まれた俊賢が(あの人にはきっと断られるだろうな)と思い、話をもっていかなかったのだろう。27話で、彰子入内の屏風歌を「あり得ぬ」と断ったことが思い出される。 帝から直々に上卿(しょうけい/行事を指揮する公卿)を仰せつかった実資は、大臣らが出席していない異常さに戸惑いながらも、 「承知しました。『天に二日なし、土に二主なし』」 と述べる。天にふたつ太陽がないように、地に二人の主がいてはならない。儒教の経典『礼記』のこの言葉は、この日の実資の日記『小右記』に記されている。実資の指揮により立后の儀は執り行われたものの、閑散としたままの饗宴……。皇后宮大夫という役職ゆえに当然ここに居ねばならず、やけっぱちで箸を進める隆家(竜星涼)と黙々と食べる実資。 三条帝と左大臣・道長の対立の矢面に立たされた皇后・娍子が気の毒だ。なんでこの人がこんな惨めな思いをせにゃならんのか。 対照的に大賑わいの姸子中宮参入の饗宴。後味の悪い道長の勝利だった。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』22話 周明(松下洸平)登場!大陸の波打ち寄せる越前での運命的な出会いからの衝撃「日本語喋れるんかい!!」
- 考察『光る君へ』23話 宣孝(佐々木蔵之介)が越前に来た!ウニを匙で割ってご馳走する可愛いまひろ(吉高由里子)に「わしの妻になれ」ドンドコドン!
- 考察『光る君へ』24話 まひろ(吉高由里子)に忘れえぬ人がいても「まるごと引き受ける」宣孝(佐々木蔵之介)の大人の余裕と包容力!
- 考察『光る君へ』25話 まひろ(吉高由里子)を娶ったとわざわざ報告する宣孝(佐々木蔵之介)、動揺を隠せない道長(柄本佑)
- 考察『光る君へ』31話 一条帝(塩野瑛久)の心を射貫くのだ! まひろ(吉高由里子)の頭上から物語が美しく降り注ぐ歴史的瞬間。しかし道長(柄本佑)は困惑気味