「自社の事業は何か」ドラッカーのシンプルな問いに答えることが、なぜ経営トップにとって極めて重要なのか?
「自社の事業は何か」という問いの本質は、商品やサービスによって顧客が満足している欲求の中で、「何が最も重要であり、何が最も将来性があるか*79 」ということを考えなければならないということなのです。 ドラッカーはアメリカの石炭産業や鉄道会社が「自社の事業は何か」ということを自明のものとせずに真剣に考えていたならば、「わずか一世代の間に転落するなどということもなくすんだに違いない*80 」 1番目の「自社の事業は何か」という問いに関して、ドラッカーは「事業が何であるかを決めるのは、生産者ではなく顧客である。社名や定款ではない。顧客が製品やサービスを購入して満足させる欲求が何であるかが、事業が何であるかを決める*81 」と言います。 ということは、この1番目の問いの「自社の事業は何か」に答えるためには、自社の「顧客はだれか*82 」をまず明確にしなければなりません。第5回で説明したスバルもマツダも自社の顧客を明確にしています。 次に、「顧客はだれか」と同時に極めて重要な問いが「顧客は何を価値あるものと考えるか*83 」です。スバルもマツダも自社の顧客を明確にしたうえで、特定した顧客にとっての価値を徹底的に追求しています。 1番目の「自社の事業は何か」という問いは、もちろん将来の事業の姿にも影響を与えます。ただ、基本的には現在の事業についての問いです。経営陣は未来の事業についても考える必要があります。事業に関するドラッカーの2番目の問いは「自社の将来の事業は何か」です。 この問いに答えるには、次の2つのこと*84 を考えておく必要があります。 市場の可能性とトレンド 現状の製品やサービスでは満たされていないものは何か *79、80『[新訳]現代の経営』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、(ダイヤモンド社)の第6章 *81、82、83 『[新訳]現代の経営』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、(ダイヤモンド社)の第6章 *84 『マネジメント 務め、責任、実践』P・F・ドラッカー著、有賀裕子訳、(日経BP社)の第7章