なぜマー君は8年ぶりの復帰登板で勝てなかったのか?
「ゲームを通して後半のピッチングができればいい」 「勝たなくてはいけないゲームだった。残念」 3回以降のピッチング内容への手ごたえも、負けた悔しさを上回ることはなかった。 1、2回の田中と3回以降の田中の違いをどう評価すればいいのだろうか。専門家の意見を聞いた。パ・リーグの野球に詳しい元阪神、ダイエー(ソフトバンク)、ヤクルトの評論家の池田親興氏は復帰初登板をこう分析した。 「軸足のふくらはぎを痛めた後、実戦登板をしないまま、ぶっつけ本番でマウンドに上がった影響が立ち上がりに出たと思う。まだ全力で投げる状況ではく、おそらく8割程度の感覚だったのではないか。楽天時代に野村監督は“マー君神の子“と表現したが、さすがに、これだけの注目と期待を浴び、そしてチームが首位に立っていたプレッシャーは相当あったと思う。それらが重なってストレートの制球にミスが生まれ、中田、石井に一発を浴びた。8年前のようなパワーピッチャーの印象もなくなっていた。しかし、3回からは豊富な種類の変化球を主体にするピッチングに切り替えて見事にゲームを作った。持ち球はすべて使ったのだろう。ストレートと同じ腕の振り、球筋からスライダー、スプリットをあれだけの落差で落とされコントロールされたら攻略は難しい。田中が、どんな状況でもゲームを作れて、勝てるピッチャーであることを証明したのではないか」 当初、3月27日の開幕第2戦に先発予定だったが、直前になって右ひらめ筋損傷を起こして登板を回避した。場所が場所だけに大事をとって、2度のブルペン登板を経て、この日の復帰戦に備えたが、ファームで投げるなどの試運転は行わない“ぶっつけ本番“だった。そして国民注目の一戦という名の見えないプレッシャー。 ストレートに制球ミスが続いたことと、そのミスを球威でカバーできなかった理由には、その影響もあったのだろう。 池田氏は、さらにこう続ける。 「今後、登板回数が増えるに従ってコンディションも上がり、日本のマウンドなどの環境にも慣れてストレートの球威も増してくると思う。そうなると変化球の効果がさらに増す。メジャーで球数を減らすピッチングを覚えてきたことでイニング数も伸びるだろう。打線の得点能力も上がっているし、いつ勝つどころか、彼がここからローテーの軸になることは間違いない」 右足とリカバリーに問題がなければ、田中の次戦は24日、本拠地での西武戦となっている。田中が、夜になって公開したYouTubeによると、試合後、映像で全球をチェック、復帰初勝利へ巻き返し準備をスタートしたそうである。