なぜマー君は8年ぶりの復帰登板で勝てなかったのか?
スランプにあえぎ、転倒して目を腫らす事件まで起こしていた中田にとって67打席目にしての今季1号。マー君によって目が覚めた中田は6回にも2番手の牧田からも4-1とリードを広げる2号ソロを放ち力投を続けた上沢の今季初勝利をアシストしている。 楽天は2回に「7番・三塁」でスタメン抜擢された智弁和歌山出身の2年目、黒川のタイムリーで1点を返した。だが「得点した後は取られるな」の鉄則を田中は守ることができず、2回にも先頭の石井にボールワンから144キロの高めに浮いた絶好球をライトスタンドに今季1号を運ばれた。石井は昨年の本塁打はゼロ。長距離打者ではないがライトの小郷が一歩も動けないほどの完璧な当たりだった。 「四球、ホームランと点の取られ方もそうですし、2イニング目のところは、1点を返して、さあいけるぞ、いくぞというところでポーンと打たれてしまった。もったいない失点の仕方だった」が、田中の試合後の反省の弁である。ちなみに田中のNPBでの1試合2被弾は2013年7月26日のロッテ戦で、現在チームメイトの鈴木大地と、現在ロッテ監督の井口に打たれて以来だった。 だが、3回からマー君のピッチング内容がガラっと変わった。約40%を占めていたストレートを見せ球以外には使わず「自分の中で修正を重ねながら」多彩な変化球を駆使する芸術的な技巧派ピッチングに切り替える。ヤンキースで7年エースを張った実力はダテではない。3回二死から巡ってきた中田との2度目の対決では、カーブとスライダーで空振りを奪って追い込み、最後はワンバウンドのスライダーでバットに空を切らせた。4回には、一死から大田にレフト前ヒットを許すが、前の打席で本塁打を浴びた石井をスライダーで仕留めた。田中は強烈なピッチャーライナーを抜群の反応でキャッチするとスタートを切っていた走者が帰塁できず併殺である。 5回は清水をスライダーで右飛、粘りが武器の中島もスライダーでスイングアウト。トップの西川もスプリットで、この日、5つ目の三振に斬って取った。3回以降に投じた43球は、スライダー、スプリット、カーブ、カット、ツーシームと、持ち球をすべて駆使したものだった。やはり修正能力、対応能力はズバ抜けている。 田中は、6回の自軍の攻撃をベンチで見守ったが、ツーアウトになってもキャッチボールに出ることなく攻撃終了と同時にベンチ裏に下がった。75球でマウンドを降りることになったが、石井監督は当初から80球をメドとして考えていたという。