ニューカレドニア暴動と重要鉱物の中国の生産過剰問題
中国の生産過剰を巡る問題はさらに広がるか
欧米諸国は現在、経済安全保障の観点も含め、EV分野での中国の生産過剰、海外へのダンピング輸出を重要な問題としているが、重要鉱物、レアメタルでも同様の問題が生じているのである。 実際、中国は世界の鉱物の囲い込み競争で明らかに優位に立っている。西側企業が長年、汚職や政情不安などの問題から避けていたインドネシアやマリ、ボリビア、ジンバブエなどの資源大国にも、中国企業は積極的に進出している。また中国国有銀行も国外での発電所や工業団地に積極的に融資し、こうした中国企業の海外展開を助けている。 製造過程の川上の原材料から川下の完成品に至るまで、中国の生産過剰が今後も続く場合には、それらは世界の物価を押し下げるとともに、中国以外の国での生産活動を阻害するだろう。それを回避するため、先進諸国は、中国製品に対する制裁関税の導入、強化などの措置を一段と拡大していくことになるのではないか。 しかしそうした措置は、中国からの報復措置を生み、報復の応酬が繰り返される中で、世界の貿易はさらに縮小し、世界経済の潜在力を一段と削いでしまう。いずれにしても、世界経済には強い逆風となりかねない状況だ。 (参考資料) "China Is Winning the Minerals War(中国の独壇場、鉱物資源の獲得競争で西側圧倒)", Wall Street, May 23, 2024 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英